6軸モーションセンサを活用したケーブルレス作業姿勢計測システム

要約

6軸モーションセンサ、無線モジュール、データ変換ソフトから構成される作業改善・評価のための姿勢計測システム。センサケーブルが無いため装着が容易で、作業者の姿勢をより自然に計測できる。

  • キーワード:作業姿勢評価、作業改善、ZigBee,ケーブルレス
  • 担当:中央農研・高度作業システム研究チーム
  • 代表連絡先:029-838-8904
  • 区分:共通基盤・作業技術、関東東海北陸農業・作業技術
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

「作業姿勢モニタ」(1993年度成果情報)は、センサの小型化と角度測定範囲の拡大などの改良を行い(2005年度成果情報)、現場での農作業改善や負担評価に活用されている。しかし、多チャンネル化したセンサケーブルが作業に支障を来す場合もあり改善の要望が出されていた。そこで、6軸モーションセンサと無線モジュールを組み合わせたケーブルレス作業姿勢計測システムを開発し、農作業改善や負担評価の効率化を図る。

成果の内容・特徴

  • 本システムは、6軸(3軸加速度、3軸地磁気)モーションセンサ「AMI602」(4.2×6.2×1.1mm、方位精度:±1.2度、傾斜精度:±1.4度)とZigBee無線モジュール「ZB08」とマイコン「ATmega644」を組み合わせたセンサタグ(図1)を身体各部に装着し、ケーブルレスで関節角度や姿勢の測定を行うことができる。データはシリアル接続したZigBeeコーディネータを介してパソコンに記録する(図1)。
  • センサタグのデータは、ピッチ角(±180度)、ロール角(±90度)、ヨー角(0~360度)が最高10Hzで出力される。センサタグの連続測定時間(3.6V、645mAhのリチウムイオン電池使用)は8~9時間、通信距離は見通しのよいところで20~50mである。信号の受信状況はパソコンの画面上でリアルタイムに確認することができる。
  • センサタグ(質量:94g(旧型の2分の1))は伸縮性を有する面ファスナーで身体各部に装着する(図2)。ケーブルの装着が必要無いため、測定準備に要する時間が約3分と従来の3分の1に短縮され、ケーブルが身体や機械、作物に触れることもなく被験者の動きもより自然である。
  • パソコンに記録されたデータは、データ変換ソフトによりセンサ番号順、受信時間順にソートした後、線形補間を行い10Hzでリサンプリングして「作業姿勢モニタ」用ソフト(2005年成果情報)で姿勢のスティックピクチャ表示や解析・評価を行う(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 本システムは、普及現場等で作業姿勢の問題点の摘出や作業改善効果の確認に活用できる。
  • 全身の姿勢を計測するためには10個(上腕、前腕、大腿、下腿に左右各1、体幹に上下各1)のセンサタグを装着する必要がある。
  • ロール角の測定範囲が±90度であるため、肩より上の作業を確実に計測するには上腕、前腕部のセンサタグのゼロ点をオフセットして装着する必要がある。
  • センサタグ(4.5万円/個)とコーディネータ(3.5万円/台)は2011年度、受注販売される。

具体的データ

ケーブルレス作業姿勢計測システム

ZigBee:IEEE802.15.4に準拠した近距離向けの低消費電力無線で、日本では2.4GHzの帯域
で通信を行い、最大データ転送速度は250kbpsである。

従来型(左)との比較

解析画面(左:スティックピクチャ、右:体幹角度の分布)

その他

  • 研究課題名:農作業の高精度化・自動化等による高度生産システムの開発及び労働の質改善のための評価指標の策定
  • 中課題整理番号:223a
  • 予算区分:実用技術、基盤
  • 研究期間:2008~2010年度
  • 研究担当者:小林恭、相澤正樹(宮城農園研)、瀬尾明彦(首都大学東京)、阿部和博(福島農総研)、建石邦夫、菊池豊