ヘアリーベッチ栽培と湛水処理による夏作畑雑草の埋土種子量低減と発生抑制
要約
大豆作圃場において、冬期から春期の不作付け期間にヘアリーベッチを栽培し、その後1ヵ月の湛水処理を行うことで、大豆播種後のイヌビエの発生を抑制し、オオイヌタデの埋土種子量を低減させる。
- キーワード:カバークロップ、短期湛水、イヌビエ、オオイヌタデ、埋土種子量、大豆
- 担当:中央農研・カバークロップ研究関東サブチーム
- 代表連絡先:電話029-838-8522
- 区分:共通基盤・雑草
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
不作付け期間の耕地管理は総合的雑草管理技術の基本要素の一つである。水田での大豆単作体系における総合的雑草管理を想定し、大豆作付け前の冬期から春期にかけてヘアリーベッチを栽培し、その後約1ヵ月の湛水処理を行うことにより、大豆播種前後の主要雑草の発生を抑制させる効果を明らかにする。また、これらの埋土種子量を低減させることにより、総合的雑草管理の体系化を目指す。
成果の内容・特徴
- ヘアリーベッチ栽培と1ヵ月の湛水処理の組み合わせにより、イヌビエでは湛水期間終了後から耕起・大豆播種までの期間の発生本数は慣行区の3~4倍に促進され、大豆播種後の発生本数は対慣行区比約25~40%に抑制される(図1)。
- 同処理により、オオイヌタデでは湛水期間終了後から耕起・大豆播種までの期間の発生本数は慣行区の約20~50%に抑制される。しかし、大豆播種後の発生については慣行区と比較して抑制効果は認められない(図1)。
- ヘアリーベッチ栽培と1ヵ月の湛水処理の組み合わせにより、オオイヌタデの埋土種子量は初年目の大豆栽培期間中に慣行区より速く低減する(図2)。イヌビエにおいては、同処理による埋土種子量の低減効果は認められない。
成果の活用面・留意点
- 大豆作における耕種的な雑草発生制御、埋土種子低減技術として利用できる。
- 本成果で得られた効果の要因として、ヘアリーベッチに含有されるシアナミドや有機酸の影響等が推測されるが、今後さらに検証する必要がある。また、イヌビエ、オオイヌタデ以外の草種に対する効果については別途検討する必要がある。
- 本成果は、中央農業総合研究センター観音台枠水田圃場(灰色低地土、1ブロック2a、2反復)において、新たな雑草種子の耕地土壌への混入を防ぐ条件で行われた試験結果によるものである。提示した試験条件においては、ヘアリーベッチ栽培と1ヵ月の湛水処理の組み合わせ処理は大豆の生育・収量には影響を及ぼさない。
具体的データ


その他
- 研究課題名:カバークロップ等を活用した省資材・環境保全型栽培管理技術の開発
- 中課題整理番号:214c
- 予算区分:交付金プロ(総合的雑草管理)
- 研究期間:2007~2010年度
- 研究担当者:中谷敬子、鄭 凡喜、澁谷知子、三浦重典