関東平野部におけるナタネ品種「キラリボシ」の播種適期と栽培管理法

要約

茨城県南部でナタネ品種「キラリボシ」を10月中に播種することで、凍害にあうことが少なく、梅雨前にコンバイン収穫できるようになる。秋雨による冠水害を避けるために畝立て栽培を行い、転換初年目圃場では砕土性を良くすることに留意する必要がある。

  • キーワード:ナタネ、キラリボシ、転換畑、冠水害、凍害、砕土性、播種期、葉数
  • 担当:中央農研・バイオマス資源循環研究チーム
  • 代表連絡先:電話029-838-7038
  • 区分:バイオマス
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

転換畑のナタネでは、播種時の冠水害や、転換初年目圃場の砕土不良によって株数が確保できずに減収することがあり、遅播きによる凍害や、収穫期の梅雨による種子発芽、湿害などによる減収も問題となる。ここでは、茨城県南部の転換畑におけるナタネ栽培試験から、関東地方平野部で安定して収量を確保できるナタネ栽培法を提示する。

成果の内容・特徴

  • 茨城県南部では、ナタネの播種期は秋雨に、収穫期は梅雨時期に一致することがあるが、10月中に播種した「キラリボシ」は、4月に開花し、6月に成熟してほぼ梅雨前にコンバイン収穫が可能になり、200kg/10a以上の収量を確保しうる(図1)。
  • 茨城県南部では1~2月の厳寒期に最低気温が-5°C程度まで低下することがあり、越冬前に本葉3枚以上確保しないと、凍害などによってナタネが枯死することがある。ナタネの葉数は5°C以上の有効積算気温と正の相関がある(図2)ので、凍害回避のため10月中に播種し、年内に有効積算気温200°C以上を確保する。
  •  11月に播種しても200kg/10a以上の収量を確保できる場合があるが、開花時期の遅い2次分枝の莢が多くなり、収穫期が遅れ、梅雨時に収穫する危険性が高くなる。まれに、12月中に最低気温が-5°C以下となる年度もあるため、播種は10月中に行うことが望ましい。
  •  播種~出芽の間に冠水した場合、株数が減少するため、小明きょ浅耕播種機注)などで畝立て栽培を行う(図3)。転換初年目圃場では砕土性が悪いため、出芽率を確保するため、播種前に1回ロータリー耕うんする必要がある。
    注)http://www/affrc.go.jp/ja/agropedia/seika/data_biomass/h19/data_common/h19/narc07-31
  • ナタネは畦間33cm、播種量500g/10a、播種深度3cm程度に条播する(肥培管理その他は表1参照)。コンバイン収穫は圃場全面の莢が褐変してから行う。

成果の活用面・留意点

  • 有効積算気温と葉数の関係は他の地域でも適用できるが、積雪地などでは、越冬前にさらに多くの葉数を確保する必要がある。
  • 関東地方での梅雨時期、秋雨時期には大きな差がないと考えられるが、1月の最低気温は、関東北部と関東南部で大きく異なる。地域ごとの気温の推移の検討が必要になるが、1月の最低気温が零下まで低下することが少ない関東南部では、今回の結果よりも、遅い時期に播種できる可能性がある。

具体的データ

播種期と収量の関係 小明きょ浅耕播種機と地表排水
ナタネの葉数と有効積算気温の関係

ナタネ品種「キラリボシ」の栽培暦(茨城県南部)

その他

  • 研究課題名:温暖地における油糧作物を導入したバイオマス資源地域循環システムの構築
  • 中課題整理番号: 411c.1
  • 予算区分: 基盤、実用技術
  • 研究期間:2006~2010
  • 研究担当者:松﨑守夫、安本知子、薬師堂謙一、岡田謙介、冨樫辰志、谷脇憲、加藤仁、
                       梅田直円(生研センター)、森拓也(茨城総農セ)、弓野功(茨城総農セ)