週間予報とアメダス観測値を組み合わせた全国メッシュ気象データシステム

要約

システムは、観測値(一昨日まで)、週間予報値(昨日から6日先まで)、平年値(7日より先)を組み合わせ、1年分の日別気象データ(気温、降水量)を約1kmのメッシュサイズで全国について作成し毎日自動更新する。農業気象災害の早期警戒等に活用できる。

  • キーワード:標準地域メッシュ、日別気象データ、数値予報
  • 担当:中央農研・農業気象災害研究チーム
  • 代表連絡先:電話029-838-8946
  • 区分:共通基盤・農業気象
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

農作物の気象被害の解析や評価を迅速に実施するためには、メッシュ化された気象データが最新の状態で準備されている必要がある。また、作物の成長予測や農業気象災害の早期警戒に活用するうえでは、将来の気象を予測する必要がある。従来のメッシュ気象データセットは、更新に一か月程度以上の期間が必要であったり範囲が特定地域に限定されたりするなど不十分な点があった。そこで、平年値を最新の数値予報値と観測値で日々自動的に置き換え、6日間の将来予測も含む常に最も確からしい一年間分の気象データを全国についてメッシュで提供するシステムを開発することにした。

成果の内容・特徴

  • このシステムは全国の日別平均・最高・最低気温、日積算降水量を、標準地域三次メッシュ(約1km)で一年分作成し、日々、最新の観測値と予報値で更新する(図1)。一昨日までについてはアメダス等の観測値、昨日から6日先までは補正した週間予報値、7日から先は日別平年値をそれぞれメッシュに展開して通年データとする。
  • 気温観測値のメッシュ展開は、観測値と平年値との差を距離重み付き補間し、当該日の三次メッシュ日別平年値に加して行う。
  • 降水量観測値のメッシュ展開は、解像度約5kmの短期数値予報分布図から抽出した値と観測値との差を距離重み付き補間して、もとの分布図に加して行う。このため、約20km間隔の観測値を単純に補間する方法比べて山岳地域の補間精度が高い。
  • 気温週間予報値のメッシュ展開は、最新の予報値に、過去30日間について平均した展開済み観測値と予報値の差を加して行い、同様に、降水量では比を乗じて行う。
  • データは、特定の日におけるすべてのメッシュの値を納めたファイル、および、各メッシュの1年分の日別値を一次メッシュを単位に束ねたファイルの2種類で出力される。地域的な解析には前者が適し (図2)、生育予測等には後者の利用が適する。
  • 週間予報からは湿度や風速、雲量なども得られるので、このシステムを応用することで、作物の濡れ時間の推定に有効な湿度80%以上の継続時間など、アメダスデータからは推定が困難な指標の分布を推定・予報することが可能である(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 水稲の高温障害、小麦の穂発芽や赤かび病などに関する、さまざまな早期警戒システムに利用できる。
  • 地点や範囲の要求に応じてデータを配信するサービスを開始する予定である。
  • システムを拡張し、日射量、下向き長波放射量、相対湿度、風速をデータセットに追加する予定である。また、気温については予報期間を延長する予定である。
  • 週間予報・短期予報データと観測データは気象庁より入手する。日別平年値は、(独)農業環境技術研究所の「アメダスのメッシュ化データ」より作成された。

具体的データ

メッシュ気象システムが2010年8月2日に作成した日平均気温から、茨城県つくばみらい市谷和原における値を取り出したもの(赤線)。

メッシュ気象システムの計算結果から作成した全国の気温分布図(2010年8月1-20日の平均気温:?C)。

メッシュ気象システムが2010年5月15日に推定した作物の濡れ指数(湿度80%以上の日積算時間)から、広島県福山市の値をとりだしたもの(赤線)。

その他

  • 研究課題名:高品位安定生産のための農業気象災害警戒システムの開発
  • 中課題整理番号:215c
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2006~2010年度
  • 研究担当者:大野宏之、大原源二、吉田ひろえ、中園 江、中川博視