女性農業者の経営能力に関する自己評価の規定要因
要約
女性農業者の経営能力に関する自己評価は、計数管理に関しては、農外職歴や学習経験がある場合に高い。栽培技術・飼養管理技術など複数項目については、経営における管理責任を有する場合に高い評価であり、責任分担の重要性を示す。
- キーワード:女性農業者、経営能力、自己評価、学習経験、管理責任
- 担当:中央農研・農業経営研究チーム
- 代表連絡先:電話029-838-8481
- 区分:共通基盤・経営、関東東海北陸農業・経営
-
分類:技術・参考
背景・ねらい
女性農業者の経営への参画や働きの実態にみあった報酬が政策推進上の目標とされてきているが、それらはまだ十分には進展していない。その背景の一つには、女性農業者自身の経営能力に対する自己評価が低いことがあると考えられる。そこで、女性農業者に対する質問紙調査により、学習経験や経営内の管理責任と経営能力に関する自己評価の関連を整理し、高い自己評価をもたらしている要因を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 農業経営において必要となる能力に関する女性農業者の自分自身、および配偶者への評価結果(図1)をみると、自己評価は「農業機械操作」や「栽培技術・飼養管理技術」では低く、配偶者への高い評価とは異なる。一方、「労働者の適材適所配置・雇用管理」や「消費者ニーズの把握」、「計数管理・経理」については自己評価が相対的に高く、配偶者の能力は女性回答者自身の能力よりむしろ低く評価される傾向にある。
- 農外職歴がある場合、関連のセミナー受講歴がある場合に、「計数管理・経理」に関する自己評価は高く、この分野における知識の習得の意義は大きい(表1)。
- 経営における管理責任の有無と自己評価の関係をみると(表2)、「計数管理・経理」能力について、生産、労務、財務の管理責任を有する回答者で自己評価が高い。また、「栽培技術・飼養管理技術」得点についても、生産、販売の管理責任をもつ回答者で自己評価が高い。「労働者の適材適所配置・雇用管理」や「農政・諸制度の理解」に関する得点についても、販売責任を有する回答者で高くなっている。このように、女性農業者の自己評価は経営における管理責任の有無との関連が強く、管理責任を持つことによる知識や経験の蓄積、外部との交流による情報や客観的視角の獲得が自己評価に結びついていることを示唆する。
成果の活用面・留意点
- 指導機関や経営主が、女性農業者の経営における貢献を高めようとする際の参考となる。
- A県女性農業者のリーダーである女性農業士会会員106名を対象とした質問紙調査結果による。2010年3月に実施し62名から回答を得た。回答者のうち4名が家族農業経営を法人化し、57名が家族経営協定を締結している。
-
同時に実施した調査で、女性農業者の配偶者(男性)51名にも同様の能力評価を求めており、項目ごとの夫、妻に対する評価得点の傾向は女性回答者とほぼ同様であった。
具体的データ



その他
- 研究課題名:関東・東海・北陸地域における個別経営体の総合的経営管理手法及び多様な主体間連携による地域活性化手法の開発
- 中課題整理番号:211a.3
- 予算区分:基盤、科研費
- 研究期間:2006~2010年度
- 研究担当者:原 珠里