アカスジカスミカメとアカヒゲホソミドリカスミカメの混合誘引剤の開発

要約

2種斑点米カメムシ、アカスジカスミカメとアカヒゲホソミドリカスミカメのフェロモン成分を混合しても雄に対する誘引活性は低下しないことから、フェロモン成分の混合誘引剤を用いることにより、2種をひとつのトラップで同時にモニタリングできる。

  • キーワード:アカスジカスミカメ、アカヒゲホソミドリカスミカメ、イネ、斑点米、性フェロモン、モニタリング
  • 担当:中央農研・斑点米カメムシ研究チーム
  • 代表連絡先:電話029-838-8481
  • 区分:関東東海北陸農業・関東東海・病害虫(虫害) 、共通基盤・病害虫(虫害)
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

アカスジカスミカメやアカヒゲホソミドリカスミカメは、ともに斑点米を発生させ米の品質を著しく低下させる。この2種のカスミカメムシ類ではそれぞれ雄を誘引する性フェロモン成分が同定されており、発生予察技術の開発が進められている。両種は日本の広い地域において同所的に存在していることから、ひとつのトラップで同時にモニタリングできれば、調査労力やコストの削減につながる。
そこで、混合誘引剤を用いた2種カスミカメムシのトラップへの捕獲を検討することにより、より効率的なモニタリング技術の開発を行う。

成果の内容・特徴

  • イネ科植物が生育した野外における誘引試験において、アカスジカスミカメとアカヒゲホソミドリカスミカメのフェロモン成分(図1)をゴムキャップに含浸させた混合誘引剤は、それぞれの種の誘引剤(アカスジカスミカメ用誘引剤およびアカヒゲホソミドリカスミカメ用誘引剤)と同様に2種カスミカメムシ類を誘引し、捕獲数においても有意な差はない(図2)。
  • イネが出穂した水田においても、混合誘引剤はそれぞれの種の誘引剤と同様に2種カスミカメムシ類を誘引し、捕獲数においても有意な差はない(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 本種の発生予察技術を開発するための基礎的資料となる。
  • すでにアカスジカスミカメではhexyl butyrate、(E)-4-oxo-2-hexenal、(E)-2-hexenyl butyrate (Yasuda et al., 2008)、アカヒゲホソミドリカスミカメではhexyl hexanoate、(E)-2-hexenyl hexanoate、octyl butyrate (Kakizaki and Sugie, 2001)のそれぞれ3成分からなる性フェロモンが同定され(図1)、それぞれの合成フェロモン剤は種特異的な誘引を示す。
  • 本混合誘引剤は灰色ゴムキャップ(1F Sleeve Stopper 1888 Gray, 8 mm outside diameter, West Pharmaceutical Services Singapore Pte Ltd., Singapore)に含浸させたものであり、粘着板をトラップとして利用できる。
  • 本合成フェロモン剤およびこれらの成分を用いた直接的な防除技術については検討されていないので、現在は本混合誘引剤をアカスジカスミカメやアカヒゲホソミドリカスミカメの防除に用いることはできない。

具体的データ

アカスジカスミカメとアカヒゲホソミドリカスミカメの性フェロモン成分

イネ科雑草地(茨城)における混合誘引剤の2 種カスミカメムシ類に対する誘引活性現地水田( 千葉・富山・宮城) における混合誘引剤の2 種カスミカメムシ類に対する誘引活性

その他

  • 研究課題名:斑点米カメムシ類の高度発生予察技術と個体群制御技術の開発
  • 中課題整理番号: 214g
  • 予算区分: 基盤、実用技術開発
  • 研究期間:2006-2010年度
  • 研究担当者:安田哲也、奥圭子、樋口博也、鈴木智貴(宮城古川農試)、加進丈二(宮城古川農試)、
                       吉島利則(富山農総セ農研)、渡邊朋也、武田藍(千葉農総研)、安田美香、田渕研、高橋明彦、
                       山下美与志(信越化学)、福本毅彦(信越化学)、望月文昭(信越化学)
  • 発表論文等:1) Yasuda T. et al. (2010) Appl. Entomol. Zool. 45(4):593-599