日本に飛来するウンカの台湾における主な飛来源は中国南部とベトナムである
要約
台湾に飛来するセジロウンカ、トビイロウンカの飛来源は、中国南部である場合が最も多く、その割合は第1期作、第2期作でそれぞれ77%、65%であり、ベトナムが次いで多い。台風は多飛来を引き起こす主要因である。
- キーワード:セジロウンカ、トビイロウンカ、長距離移動、飛来源
- 担当:中央農研・データマイニング研究チーム
- 代表連絡先:電話096-242-7731
- 区分:共通基盤・情報研究
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分類:研究・参考
背景・ねらい
台湾は日本に飛来するイネウンカ類の飛来源のひとつと考えられているので、台湾を解析対象とする。台湾におけるトビイロウンカ、セジロウンカの越冬個体群の密度は小さいため、飛来個体群が水稲被害を引き起こす最も重要な要因である。これまで飛来個体群の飛来源は、風向を用いた大まかな推測が行われたのみで、詳細に検討されていなかった。本研究では、3次元シミュレーションで飛来源を推定する後退軌道解析法(平成15年度共通基盤研究成果情報)を用いて、台湾に飛来するトビイロウンカとセジロウンカの飛来源を推定する。台湾の水稲は2期作で、4-5月と7-8月のウンカの飛来侵入がそれぞれ第1期作、第2期作のウンカ発生量と相関があるため、それらの時期のトビイロウンカとセジロウンカのトラップ捕獲数10頭/日以上を解析対象とする。また、ベトナム南部やフィリピンは、ウンカの薬剤感受性が台湾個体群と異なると考えられているので(平成20年度九州沖縄農業研究成果情報)、同地域が飛来源と推定されるのかも注目して調べる。
成果の内容・特徴
- 推定された飛来源は中国南部、ベトナム、フィリピン・ルソン島である(図1、表1)。
- 台湾の第1期作中の解析対象の77%において中国南部からの飛来が推定され、さらに、第2期作中の解析対象の65%において同地域からの飛来が推定されたことから、中国南部は最も重要な飛来源である。(表1)。
- 第1と2期作中の解析対象のそれぞれ37%と56%でベトナムからの飛来が推定されたことから、ベトナムは2番目に多い飛来源である(表1)。
- 台湾嘉義県渓口郷(図1下向き矢印)に設置したネットトラップと予察灯の捕獲データ(1990から2005年)には、100頭/日以上の飛来が12日あり、これらのほとんどは、7-8月の台風の接近もしくは通過時に起こっており、台風はウンカの多飛来を引き起こす最も重要な気象要因である。
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ベトナム南部やフィリピンは、それぞれ7事例と14事例において飛来源と推定されたので、異なった形質の個体群が台湾に飛来している可能性がある。
成果の活用面・留意点
- 異なった形質の個体群の侵入が、台湾個体群の形質にどのように影響するかは、今後台湾での注意深いモニタリングが必要である。
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台湾は日本に飛来するウンカの飛来源のひとつと考えられるので、台湾に飛来するウンカの形質については継続的に情報を得ていく必要がある。
具体的データ


その他
- 研究課題名:多様かつ不斉一なデータの融合によるデータマイニング技術の開発
- 中課題整理番号:222-c.1
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2008-2010
- 研究担当者:大塚彰・S.-H.
Huang(国立台湾大学)
- 発表論文等:Huang et al. (2010) Appl.
Entomol. Zool. 45 (3), 521-531.