飼料用米と乳酸菌RO50株を用いた4-アミノ酪酸(GABA)高含量飼料原料
要約
飼料用米に乳酸菌(Lactococcus lactis)RO50株を加えて室温~40°Cで半月~1ヶ月程度発酵させることによって、4-アミノ酪酸(GABA)を1.2g/kg程度含有する飼料原料が調製できる。
- キーワード:4-アミノ酪酸(GABA)、乳酸菌(Lactococcus lactis)RO50株、飼料用米
- 担当:中央農研・関東飼料イネ研究チーム
- 代表連絡先:電話029-838-7179
- 区分:共通基盤・総合研究、畜産草地
- 分類:研究・参考
背景・ねらい
飼料用米は水田転作に有効な作物であり、飼料自給率向上のためにも栽培面積を広げる必要がある。しかし輸入濃厚飼料より高価であり、安全性の他に付加価値をつける技術が開発されることが望ましい。
人工的な環境で高密度に飼育されている家畜は、野生動物より多くのストレスがかかるために病気になりやすい。また近年では、家畜の福祉に配慮した飼養法が求められている。そこで飼料用米を用い、哺乳動物へのストレス軽減効果がある物質4-アミノ酪酸(GABA)を多く含む飼料原料を開発する。
成果の内容・特徴
- コシヒカリ(玄米)を1.5mmメッシュ以下に粉砕、水分調製後、乳酸菌を加えて密封、室温~40°Cで保管発酵させることによって、1.2g/kg程度のGABAを蓄積できる。健康食品として市販されている発芽玄米のGABA含量は0.15g/kgであり、それよりも多い。GABA蓄積量は半月~1ヶ月で最大となるが(図1)、2ヶ月程度保管しても大きくは低下しない。
- 乳酸菌は、(Lactococcus lactis) RO50株を用いる必要がある(図1)。添加量は粉砕玄米粉(水分率15%)1kgに対し、対数増殖期の培養液100μlである。
- 粉砕玄米は、水分率30%以上に調製することが必要である(図2)。
- 乳酸菌(Lactococcus lactis) RO50株を加えた粉砕玄米は1日でpHの最低値を示すが、GABA含量はその後も増大する(図3)。
- 大ヨークシャー種の離乳子豚各区3頭で、配合飼料の30%を本飼料原料あるいは飼料用米で置き換えた給与試験では、本飼料原料区でDGは113.0gであり、飼料用米を用いた対照区のDG81.8gと比べ差がなかった。
- 飼料用米、多用途米などの各品種で、室温、半月~1ヶ月保管で、0.7~1.7g/kgのGABAが蓄積した。
成果の活用面・留意点
- 本飼料原料は配合飼料中のトウモロコシと置き換えて使用する。
- 新品種の米を用いる際には、GABAが蓄積することを確認するのが望ましい。
- 水分率は、現場での取り扱いを考え、あまり高くしないことが望ましい。
- 40°C以上の条件でもGABAが蓄積する可能性があるが、乳酸菌が死滅するため高温での保管は望ましくない。
- 開封後GABA含量は減少しないが、腐敗を防ぐために1日以内に使用するか、乾燥もしくは凍結処理しなくてはならない。
具体的データ



その他
- 研究課題名:地域条件を活かした飼料用稲低コスト生産技術および乳牛・肉用牛への給与技術の確立
- 中課題整理番号:212b.3
- 予算区分:基盤
- 研究期間:2006~2009年度
- 研究担当者:三枝貴代、蔡義民、石川哲也、石田元彦、中西直人、樋口浩二