我が国のメロンから分離された新規ネポウイルス
要約
鳥取県で微斑症状を示すメロンから分離されたウイルスは、ウリ科植物を中心に5科14種植物に感染し、直径約28nmの球形粒子で2分節のRNAをゲノムとして持つ新種ネポウイルス、「メロン微斑ウイルス(新称)」である。
- キーワード:メロン、ネポウイルス、Secoviridae
- 担当:中央農研・昆虫等媒介病害研究チーム
- 代表連絡先:電話029-838-8481
- 区分:共通基盤・病害虫(病害)、関東東海北陸農業・関東東海・病害虫(病害)
- 分類:研究・参考
背景・ねらい
鳥取県のメロン生産圃場において葉に微斑症状を呈する株が散見された。本症状は生育初期に生長点付近の本葉で認められたが、生育に伴って消失した。本症状は既報のいずれの病害によるものとも異なっていたため、その病原体を同定した。
成果の内容・特徴
- 鳥取県で微斑症状を呈するマクワ系メロンから分離されたウイルスを健全メロンに接種すると原病徴が再現された。本ウイルスは直径約28 nmの球形ウイルスである(図1)。外被タンパク質は約55 kDaであり、ゲノムは約8000および4000塩基から成る2分節一本鎖RNAである。
- 本ウイルスはウリ科作物を中心として、5科14種植物に感染した。感染植物のほとんどが無病徴である(表1)。
- ネポウイルスの分類に用いられるプロテアーゼからポリメラーゼ領域(Pro-Pol領域)のアミノ酸配列を用いて分子系統解析を行った結果、本ウイルスはSecoviridae科ネポウイルスのサブグループAに分類された(データ省略)。
- 外被タンパク質(CP)遺伝子、Pro-Pol領域、RNA1および RNA2にコードされる翻訳領域のアミノ酸配列について、本ウイルスとDDBJに登録されている既報のネポウイルス種との同一性を算出したところ、本ウイルスと既報のウイルスとは53%以下の値を示した(データ省略)。国際ウイルス分類委員会によるネポウイルス種の分類基準値はCPの同一性が75%とされていることから、本ウイルスを新種のネポウイルスと判断し、「メロン微斑ウイルス(Melon mild mottle virus; MMMoV)」と命名した。
成果の活用面・留意点
- MMMoVはマクワ系メロンの台木として頻繁に用いられるユウガオには感染しない。
具体的データ


その他
- 研究課題名:病原ウイルス等の昆虫等媒介機構の解明と防除技術の開発
- 中課題整理番号: 214e
- 予算区分:実用技術
- 研究期間:2008?2009年度
- 研究担当者:冨高保弘、宇杉富雄、安田文俊(鳥取農総研園試)、岡山裕志(鳥取農総研園試)、津田新哉
- 発表論文等:Tomitaka Y. et al. (2011) Phytopathology
101(3):316-322