バンカー法によるアブラムシ防除の成否に及ぼす二次寄生蜂の影響
要約
果菜類の促成栽培施設において天敵コレマンアブラバチに寄生する二次寄生蜂は8種認められ、これら二次寄生蜂の割合は冬期であってもバンカー設置期間とともに上昇する。3~4月にバンカー上でこれらの比率が高いと防除に失敗する確率が高まる。
- キーワード:バンカー法、コレマンアブラバチ、二次寄生蜂、促成栽培
- 担当:中央農研・総合的害虫管理研究チーム
- 代表連絡先:電話029-838-8939
- 区分:関東東海北陸農業・関東東海・病害虫(虫害)、共通基盤・病害虫(虫害)
- 分類:研究・参考
背景・ねらい
バンカー法は施設内で天敵を長期継続的に維持し、害虫侵入直後の低密度のうちに防除することをねらう方法である。促成栽培のナス、ピーマンなどのアブラムシ対策としては、ムギ類に定着させたムギクビレアブラムシなどを代替寄主として用いて、天敵コレマンアブラバチを放飼する方法が実用化されており、この方法を実施した産地においては、7割近くの施設で収穫盛期にアブラムシ対処薬剤の全面散布を避けられるようになった。しかし、残りの約3割の施設では全面散布を余儀なくされており、この原因の一つに天敵アブラバチに寄生する二次寄生蜂の影響があげられている(長坂ら、2010)。そこで、バンカー上の二次寄生蜂の種構成を明らかにするとともに、二次寄生蜂によるバンカー法の成否への影響を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 高知県のナス・ピーマン等の促成栽培施設内のバンカー上(ムギ類に代替寄主ムギクビレアブラムシを定着させたもの)において、天敵コレマンアブラバチに寄生する二次寄生蜂は8種認められ、そのうちAlloxysta sp. nr victrix、Dendrocerus laticeps、Syrphophagus sp.の3種が期間中連続して発生した主要種である(図1)。
- バンカー上の寄生蜂全体に占める二次寄生蜂の割合は、冬期であっても設置期間とともに上昇する(図1)。
- バンカー法によるアブラムシ防除に失敗した施設では、成功した施設に比べて、二次寄生蜂の増加の仕方が急激である(データ省略)。
- 3月~4月にバンカー上で二次寄生蜂の割合が高いとアブラムシ防除に失敗する確率が有意に高まる(表1)。
- 作物上のアブラムシ密度が要防除に達したと生産者に判断され、実際に薬剤全面散布がなされた施設(防除失敗)においては、バンカー上での二次寄生蜂の割合は、薬剤全面散布実施の1ヶ月前には60%を越えている(図2)ことから、バンカー上での寄生蜂をモニターすることにより、バンカー法の効力の衰えを予測することが可能である。
成果の活用面・留意点
具体的データ



その他
- 研究課題名:天敵の害虫制御能力の解析と増強法の開発
- 中課題整理番号:214f
- 予算区分:基盤
- 研究期間:2006~2010年度
- 研究担当者:長坂幸吉、高橋尚之(高知県農業技術センター)、岡林俊宏(高知県農業振興部)
- 発表論文等:1)Nagasaka
K. et al.(2010)Appl. Entomol. Zool. 45:541-550
2)長坂ら(2010)中央農研研究報告15:1-50