日本産モノンクス目線虫の4新種と国内初検出6種

要約

国内から検出される線虫捕食性のモノンクス目線虫は、4属4新種(Clarkus enigmatusPrionchulus japonicus、Mylonchulus monhysteraMiconchus nipponi)と初検出した5属6種を従来の記録と併せて8属25種である。

  • キーワード:線虫捕食性線虫、モノンクス目、新種、初記録種、分類
  • 担当:中央農研・病害虫検出同定法研究チーム
  • 代表連絡先:電話029-838-8839
  • 区分:関東東海北陸農業・関東東海・病害虫(虫害)、共通基盤・病害虫(虫害)
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

モノンクス目(Mononchida)線虫は8科、49属を含む大きな分類群である。日本における分類学的研究は少なく、国内分布種の記録はまだ不完全である。本線虫目の構成種は広い口と歯を持ち、線虫や土壌動物を捕食している。本目線虫種が高密度で分布する圃場では作物加害線虫種の密度が低いという観察があり、かつてネコブセンチュウ等有害線虫類の生物防除資材として開発が示唆されたこともあったが、捕食対象種を選ばないため、特定有害種に対する高い密度抑制効果は必ずしも期待できないとされた。農耕地では、線虫剤を処理しない場合に検出密度が高いことから、農耕地土壌生態系の攪乱の程度の指標する生物群の一つである。そこで、国内で採集した線虫サンプルから本目線虫を抽出して同定し、日本産線虫データベースの整備に資する。

成果の内容・特徴

  • 日本国内では2009年までにモノンクス目線虫の5属15種が検出されていたが、4新種と6初記録種を加えると8属25種に増加する。
  • Clarkus enigmatus sp. n.は鹿児島県熊毛郡屋久町永田の林地のシダ根圏土壌から検出された。本種の頭部形態を図1Aに、計測値等を表1に示す。
  • Prionchulus japonicus sp. n.は鹿児島県熊毛郡屋久町永田の森林土壌から検出された。本種の頭部形態を図1Bに、計測値等を表1に示す。
  • Mylonchulus monhystera sp. n.は茨城県つくば市の中央農業総合研究センターの施設栽培トマト根圏土壌および鹿児島県熊毛郡屋久町船行のガジュマル根圏土壌から検出された。本種の頭部形態を図1Cに、計測値等を表1に示す。
  • Miconchus nipponi sp. n. は上屋久町永田の草本根圏土壌から検出された。本種の頭部形態を図1Dに、計測値等を表1に示す。
  • 国内に分布することが新たに確認された種は、Mononchus truncatus(屋久町の森林根圏土壌), Clarkus papillatus(つくば市の樹木根圏土壌), C. sheri(石垣市伊原間の草地), Prionchulus muscorum(屋久町船行ガジュマル根圏土壌), P. punctatus(屋久町永田のシダ根圏土壌), Coomansus parvus(屋久町山岳髙地の樹木根圏土壌) およびIotonchus parabasidontus(屋久町の森林土壌)である。主な計測値と比率を表1に示す。
  • 新しく国内記録に加わった属は、Coomansus属、Mononchus属およびPrionchulus属である。

成果の活用面・留意点

  • モノンクス目(Mononchida)の同定のための基礎的資料として活用できる。
  • 線虫データベースの素材となる。

具体的データ

日本産モノンクス目の4 新種の雌の頭部( 唇部) 形態

モノンクス目の新種と初記録種の計測値と採集地

その他

  • 研究課題名:病害虫の侵入・定着・まん延を阻止するための高精度検出・同定法の開発
  • 中課題整理番号:521b
  • 予算区分:基盤、JSPS外国人招聘研究者(長期)
  • 研究期間:2006~2010年度
  • 研究担当者:水久保隆之、吉田睦浩、Wasim Ahmad(インド、アリガー大・JSPS招聘研究員2007~2008)
  • 発表論文等:Ahmad W. et al. (2010) J. Nematode Morphol. Syst., 13 (2): 123-156