早生、短稈、多収の水稲糯新品種「里の白雪」

要約

水稲「里の白雪」は寒冷地南部では早生に属し、短稈で耐倒伏性が強く多収の糯系統である。良質で、搗き餅、おこわなどへの利用が期待できる。

  • キーワード:イネ、糯、早生、多収、短稈、里の白雪
  • 担当:作物開発・利用・水稲品種開発・利用
  • 代表連絡先:電話 025-523-4131
  • 研究所名:中央農業総合研究センター・作物開発研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

おこわ、餅、米菓などの加工原料となる糯品種には、多収であることが求められるため、多肥栽培に耐えうる短強稈であることが必要である。一方で、国民の食の安全、安心への関心の高まりから、国産糯原料への需要が高まることが予想されるが、糯品種の作付けを増やすには、主力の粳品種と収穫作業等が競合しないよう、熟期分散を図ることが必須となる。そこで、良質で、寒冷地南部では中生の「コシヒカリ」より早く収穫できる早生で、耐倒伏性を備えた多収の糯品種の開発を目指す。

成果の内容・特徴

  • 「里の白雪」は、早生でふ先色のある、良質で多収の糯品種の育成を目標として、中生で良質、多収の「北陸糯175号」と、早生でふ先色があり、良質、多収の「アネコモチ」の交配後代から育成された品種である。
  • 「ヒメノモチ」に比較して、出穂期はやや早く、成熟期はやや遅く、育成地では“早生の早”である(表1)。
  • 「ヒメノモチ」に比較して、稈長は短く、穂長はやや短く、穂数はほぼ同じで、草型は“偏穂重型”である。ふ先色は“赤褐”である。耐倒伏性は「ヒメノモチ」より強く、「峰の雪もち」並の“強”である。
  • 玄米千粒重は、「ヒメノモチ」より大きく、収量性は「ヒメノモチ」に優る多収である(表1)。
  • いもち病真性抵抗性遺伝子は+と推定され、圃場抵抗性は、葉いもちは“中”、穂いもちは“弱”である。穂発芽性は “中”である(表1)。
  • 硬化性は「ヒメノモチ」より高く、「峰の雪もち」並である(表2)。 搗き餅の食味は「ヒメノモチ」と同等か優り、「峰の雪もち」より優る(表3)。おこわは柔らかく、総合評価は「ヒメノモチ」並である(表4)。

成果の活用面・留意点

  • 搗き餅、おこわなどへの利用が期待され、島根県、および、新潟県の農業法人において、20ha程度の作付けが計画されている。
  • ふ先色が“赤褐”のため、一般の粳品種との識別が可能である。
  • 適応地域は「ヒメノモチ」等の熟期の作付が可能で、冷害の危険性の少ない東北中南部、北陸および関東以西である。
  • 耐倒伏性が“強”であるが、大豆跡等の地力が高い圃場や極端な多肥栽培では倒伏のおそれがあり、穂発芽等による品質低下を招くため、適切な肥培管理を行う。
  • 穂いもち病が弱いので、適期防除に努める。
  • 障害型耐冷性が不十分であるため、冷害の危険のある地域での栽培は避ける。
  • 縞葉枯病には“罹病性”であるため、常発地での栽培には注意する。

具体的データ

表1 「里の白雪」の特性(調査地:新潟県上越市
表2「里の白雪」の硬化性(育成地)表3 「里の白雪」の搗き餅の食味(育成地)
表4 「里の白雪」のおこわの食味(育成地、2011年)

(重宗明子)

その他

  • 中課題名:米粉等加工用・業務用水稲品種の育成及び米の未利用成分利用技術の開発
  • 中課題番号:112a0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:1996~2011年度
  • 研究担当者:三浦清之、笹原英樹、重宗明子、長岡一朗、上原泰樹、後藤明俊、小牧有三、太田久稔、清水博之、大槻寛、福井清美