多収で酒造適性に優れる掛米用水稲新品種「京の輝き」

要約

京都府と共同育成した「京の輝き」は、出穂・成熟期が「日本晴」よりやや早い、大粒で酒造適性に優れる掛米用品種である。玄米収量は「日本晴」と比較して1割ほど多い。

  • キーワード:イネ、酒米、多収、京の輝き
  • 担当:作物開発・利用・水稲品種開発・利用
  • 代表連絡先:電話 025-523-4131
  • 研究所名:中央農業総合研究センター・作物開発研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

京都府内の酒造メーカーでは、掛米には、地域ブランドとなり得る品種が存在せず、一般主食用米が転用されることが多い。このため、新たな京都ブランド清酒の展開を志向する酒造メーカーや需要に応じた米づくりを目指す農業団体からは、酒造適性が高く地域ブランドとなり得る京都府独自の掛米用品種の育成とその安定供給体制の早期確立が強く要望されている。 中央農研では京都府との共同育成により、京都府における気象および土壌等の栽培条件に適し、掛米用として優れる品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 「京の輝き」は、多収、良食味品種の育成を目的として、短稈の良食味系統である「収6602」と玄米品質が良く、多収の「山形90号」を交配した後代から育成された酒造用品種である。
  • 出穂・成熟期は「日本晴」よりやや早く、稈長および穂長はやや短く、穂数は多く、草型は“中間型”である。耐倒伏性は「日本晴」とほぼ同じ“やや強”で、収量性は「日本晴」と比較して1割ほど増収し、「祭り晴」より明らかに多収である(表1)。
  • 玄米千粒重は「日本晴」より大きく、玄米品質は「日本晴」並みである。タンパク質含有量は「日本晴」、「祭り晴」よりやや低い(表1)。
  • 高度精米時の真精米歩合は「日本晴」よりやや高く、砕米率は「日本晴」、「祭り晴」よりやや低い(表1)。
  •  清酒の醸造時のアルコール度数およびアミノ酸度は「祭り晴」と同等で、香気成分の酢酸イソアミルは「祭り晴」より多い(表2)。生成酒は、香り、味ともに「祭り晴」に優る(表3)。
  • 食味は、「日本晴」、「祭り晴」より優れ、「コシヒカリ」に近い(表1)。

成果の活用面・留意点

  • 京都府で奨励品種に採用予定であり、「日本晴」と「祭り晴」の一部に替えて、200ha程度の普及を計画している。
  • 耐倒伏性が“やや強”であるが、極端な多肥栽培では倒伏のおそれがあり、タンパク質含有量の増加による品質低下を招くため、適切な肥培管理を行う。
  • 穂いもち病が弱いので、適期防除に努める。
  • 穂発芽性が“やや易”であるため、適期刈り取りに努める。
  • 縞葉枯病には“罹病性”であるため、常発地での栽培には注意する。

具体的データ

表1 「京の輝き」の特性
表2 醸造試験結果
表3 生成酒のきき酒結果

(三浦清之)

その他

  • 中課題名:米粉等加工用・業務用水稲品種の育成及び米の未利用成分利用技術の開発
  • 中課題番号:112a0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2003年~2011年度
  • 研究担当者:三浦清之、笹原英樹、重宗明子、長岡一朗、後藤明俊、尾崎耕二(京都農技セ)、藤田守彦(京都農技セ)、竹村 哲(京都農技セ)