イネの分げつ数・二次枝梗数・一穂穎花数に影響を及ぼすLAX2遺伝子

要約

イネの側芽分裂組織で発現し、分げつ数・二次枝梗数・一穂穎花数に影響を及ぼす新規遺伝子LAX2は、既知の側芽形成関与遺伝子LAX1とタンパク質レベルで相互作用する。LAX2遺伝子の利用によって生産性が改変された育種素材ができる。

  • キーワード:分げつ、枝梗、穎花、側芽、LAX2LAX1
  • 担当:作物開発・利用・稲遺伝子利用技術
  • 代表連絡先:電話 029-838-8481
  • 研究所名:中央農業総合研究センター・作物開発研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

イネにおいて、側芽分裂組織から発生する分げつ・枝梗・穎花の数は生産性に直接影響を及ぼす重要要因である。本研究では疎粒変異体lax2の原因遺伝子の同定と解析を行い、生産性に関与するこれらの農業形質についての有用遺伝子であることを確認する。また、既知の疎粒遺伝子LAX1(K. Komatsu et al. 2003)との相互作用について分子機構を解明する。

成果の内容・特徴

  • lax2では一次枝梗数は増加するが、二次枝梗数および一穂穎花数が減少する(図1)。また、最高分げつ期の分げつ数と無効分げつ数が減少し、一株穂数は減少しない(図1)
  • lax2の原因遺伝子LAX2は第4染色体上の19.8Mb付近に座乗し、核に局在する394aaのタンパク質をコードする新規遺伝子である。
  • LAX2遺伝子は、栄養成長期には分げつへと発生する側芽分裂組織部位で、また、生殖成長期では一次枝梗および二次枝梗へと発生する側芽分裂組織部位で発現する(図2)
  • 疎粒変異体lax1lax2の二重変異体は、一次枝梗先端以外の穎花および分げつがほぼ観察されない極端な形質を示す(図1)。また、LAX2タンパク質はC端側半分程度の部位を通じて、LAX1タンパク質と相互作用する(図3)。
  • これらのことから推定されるLAX2遺伝子の働きは、分げつまたは一次・二次枝梗へと発生する側芽分裂組織部位で発現し、LAX1遺伝子とタンパク質レベルで相互作用することで、分げつ・二次枝梗・穎花形成に関与することである。

成果の活用面・留意点

  • lax2では原品種と比較し穂乾物重が30%減少し茎葉部乾物重が57%増加することから、変異型遺伝子を導入した茎葉養分蓄積型イネの育成に利用できる。
  • lax2は稈長・草丈がそれぞれ原品種より10%・6%低くなり、倒伏が少ない。また、達観では葉色が濃い。

具体的データ

図1 疎粒変異体lax2の穂の形質および分げつ数。
図2 in situ ハイブリダイゼーションによるLAX2遺伝子の発現確認。図3 酵母two-hybrid法による、全長LAX1と全長および短くしたLAX2との相互作用の確認。

(田淵宏朗、吉田均、佐藤豊)

その他

  • 研究課題名:次世代高生産性稲開発のための有用遺伝子導入・発現制御技術の高度化と育種素材の作出
  • 中課題番号:112c0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2005~2011年度
  • 研究担当者:田淵宏朗、服部奨(名大生命農学)、大前南美(名大生命農学)、佐藤(志水)佐江(名大生命農学)、及川鉄男(東大農学生命科学)、西村実(生物研)、北野英己(名大生物機構)、吉田均、経塚淳子(東大農学生命科学)、佐藤豊(名大生命農学)
  • 発表論文等:Tabuchi H. et al. (2011) Plant Cell 23(9):3276-3287