集落営農合併組織における多角化部門を活用した地域貢献活動の効果
要約
集落営農合併組織において、多角化部門を用いた地域貢献活動を行うことで、構成員の組織参加に伴う達成感や合併組織の地域社会における存在意義を高め、構成員の合併組織に対する貢献意欲を確保することが期待できる。
- キーワード:集落営農の合併、多角化、地域貢献活動、貢献意欲
- 担当:経営管理システム・ビジネスモデル
- 代表連絡先:029-838-8481
- 研究所名:中央農業総合研究センター・農業経営研究領域
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
既存の集落営農(平均規模20~30ha)の体質強化に向けては、組織合併を進めて100ha前後の経営規模を実現することとあわせて、地域資源を活用した多角化を図り、地域性を活かしたコミュニティビジネスを進めていくことが重要な課題である。特に、これら多角化の実施には、多数の構成員からの協力が必要である。そのためには、所属集落が異なる構成員から合併組織に対する貢献意欲を継続して確保する仕組みづくりが不可欠である。
分析対象の(農)ファームOは北陸地域に位置し、旧村に位置した3つの集落営農が合併した組織(4集落、経営面積65ha、2003年設立)である。
成果の内容・特徴
- ファームOは合併後に、稲・麦・大豆作に加えて、野菜作や園芸作等の多角化部門を導入(表1)し、それの一部を利用して、ひまわり迷路や食育(枝豆収穫体験)等の地域貢献活動を実施している。これら地域資源を活用した地域貢献活動は何れも無償で地域住民等に提供されている。
- 構成員のタイプ毎(表2)に組織活動に関する意識を整理する(表3)。手作業が残り出役時の創意工夫が求められる多角化部門に出役するタイプII、IVの方が、機械化が進み作業が定型化された耕種作のみに出役するタイプI、IIIよりも、組織参加による達成感を強く感じる出役者が多い。また、タイプIでは、組織参加により達成感を得て、かつ、オペレータ出役に肯定的な者(何れも4点以上)は、12名中2名(17%)に過ぎないが、タイプIIは18名中10名(56%)に達している(表3)。
- 地域貢献活動の評価について、高齢者が多いタイプIVの平均点は4点前後と総じて高いが、タイプIIはそれをさらに上回り、若年層から高く評価されている。また、タイプIでは、食育等の地域貢献活動を評価し、かつ、オペレータ出役に肯定的な者(何れも4点以上)は12名中5名(42%)となり(表3)、タイプIでも地域貢献活動を評価する者は貢献意欲が相対的に高い。また、タイプIIのそれは18名中12名(67%)に達している。
- 多角化部門の導入と、それを利用した地域貢献活動は、構成員の組織参加による達成感だけでなく、地域社会に対する合併組織の存在意義(役割)を構成員に浸透・共有していくことを通じて、若年層を含めた組織貢献意欲の向上を可能にしている。これら多角化部門を用いた地域貢献活動は、組織運営上の効果も期待できる。
成果の活用面・留意点
- 安定兼業化の元で比較的早期から集落営農の組織化が進んだ地域が対象である
具体的データ
(高橋明広)
その他
- 中課題名:地域農業を革新する6次産業化ビジネスモデルの構築
- 中課題番号:114b0
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2010~2011年度
- 研究担当者:高橋明広
- 発表論文等:高橋明広・梅本雅(2012)農業経済研究、83(4)