帰化アサガオ類の圃場への侵入を防止するための圃場周辺管理技術

要約

帰化アサガオ類の圃場への侵入を防ぐためには、開花期ごとに必ず刈り取ることや非選択性茎葉処理除草剤を使用することにより、畦畔等圃場周辺での種子生産を防止する必要がある。温暖地では6月上旬から警戒し、6月上旬、8月、9月は必ず防除する。

  • キーワード:帰化アサガオ類、雑草、ダイズ、圃場周辺
  • 担当:環境保全型防除・生態的雑草管理
  • 代表連絡先:電話 029-838-8481
  • 研究所名:中央農業総合研究センター・生産体系研究領域
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

帰化アサガオ類は東北から九州地域のダイズ畑で問題となっている。帰化アサガオ類はいったん圃場内に侵入すると除草剤が効きにくく、効率的な防除手段がないので、2~3年でまん延してしまう。圃場に落ちた種子は休眠するため、長期間残り、水稲作を複数年続けても発生する。そこで、帰化アサガオ類の圃場への侵入を防止してまん延を防ぐため、帰化アサガオ類の生態的特性に合致した圃場周辺管理技術を農業関係普及指導者、生産者に普及する。

成果の内容・特徴

  • 帰化アサガオの畦畔等圃場周辺から圃場への侵入を防止するためには、圃場周辺で開花時期ごとに必ず以下に示す効果的な防除を行い、種子生産を防ぐ(図1)。
  • 防除は、開花時期ごとに速やかに行う。温暖地では6月上旬から警戒し、発生を確認した場合は、6月上旬、8月、9月の3回は必ず防除する(図1、図2)。
  • 刈り取り等による防除では、取り残した株の節からの再生を防止するため、節を残さない様に地際から刈り取るか、株ごと抜き取る。種子の後熟防止のために抜き取った株は圃場周辺に放置しない。除草剤による防除では、グルホシネート剤を株元まで十分にかかるように散布する。先端だけの散布では株全体は枯れない(図1)。
  • 圃場周辺の帰化アサガオ類を効果的な時期と方法で防除することで、種子生産が阻止され(図2)、圃場内への侵入が防止できる。
  • 畦畔をグルホシネート剤で3回防除した場合の除草剤購入費は、10aの圃場の畦畔率を6%とすると数百円で済む。帰化アサガオ類が圃場内に侵入してまん延した場合は、栽培期間中に中耕培土や手間のかかる畦間・株間処理等の追加作業が必要となるため、未侵入圃場よりも防除コストが約3千円/10a上昇する。帰化アサガオ類の圃場内への侵入を防止することによって圃場内の除草コストを1/2以下にすることができる。

普及のための参考情報

  • 普及対象 農業関係普及指導者、生産者等。
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等 温暖地。温暖地以外では、各地域における帰化アサガオ類の開花時期を特定して応用する。帰化アサガオ類が圃場周辺に発生していない地域においては警戒情報として、発生している地域では圃場への侵入防止に使用できる。
  • その他 各地域における帰化アサガオ類の開花時期の特定および発生状況と被害内容や圃場内の防除体系に関しては関東東海北陸農業成果情報(関東東海水田作畑作部会、2006年度、2009年度、2010年度)を参照する。効果的な防除時期と防除方法の注意事項について、帰化アサガオの特徴や発生実態を含めて技術マニュアルとしてとりまとめ、Web上で公開(http://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/publication/pamphlet/tech-pamph/012185.html)するとともに冊子体を全国の農業関係普及指導機関等約500カ所と生産者等に配布している(2012.3.15現在2,148部)。本マニュアルは農林水産省東海農政局および中国四国農政局のwebページからリンクされている。

具体的データ

図1.帰化アサガオ類の圃場内侵入を防止する圃場周辺管理技術

図2.適期防除による種子生産防止(1:茨城県筑西市、2:茨城県つくば市)

(澁谷知子)

その他

  • 中課題名:生物情報に基づく帰化雑草の侵入・まん延警戒システムと長期的雑草管理法の構築
  • 中課題番号:152d0
  • 予算区分:委託プロ(気候変動)、交付金
  • 研究期間:2006~2011年度
  • 研究担当者:澁谷知子、黒川俊二、渡邊寛明、中谷敬子、三浦重典
  • 発表論文等:澁谷知子・渡邊寛明(2011)東北の雑草、11:2-6