農業生産工程管理データの統一的取り扱いを実現するデータ表現形式FIX-pms

要約

生産工程管理の側面から農業生産の場で得られる多様な形式のデータを統一的に取り扱うことを目指したデータ表現形式である。XMLスキーマ規格に則って定義され、各種農業用ソフトウェアで対応することで多様な農業情報のデータ交換基盤の一つとなる。

  • キーワード:生産工程管理、データ表現形式、規格化、XMLスキーマ、FIX-pms
  • 担当:IT高度生産システム・農業情報統合利用
  • 代表連絡先:電話 029-838-8481
  • 研究所名:中央農業総合研究センター・情報利用研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

農業生産工程管理を支援する農業用ソフトウェアがこれまで数多く提案・販売されているが、そのほとんどは独自のデータ表現形式を採用しており、各ソフトウェア間でデータの互換性が低く、ソフトウェアを変更する場合はデータを一から作成し直す必要があった。さらに、各データ表現形式の中で用いられている用語・キーワード・コンテンツリストなどについてもソフトウェアごとに概念空間を形成している場合がほとんどで、データ交換をさらに困難にしている。この問題に対し欧米等を中心にXMLベースのデータ表現・規格化の検討が進められている(たとえばEUにおけるagroXML、agriXchangeなど)が、国内農業分野においては施設内植物生産を対象としたデータ交換規格(BIX-pp:東海大学)が提唱されている程度である。

そこで、XMLスキーマ規格に基づいて、国内農業生産工程管理データを手始めに農業用ソフトウェアが使用するデータ表現・交換形式の規格化・標準化を目指す。

成果の内容・特徴

  • FIX-pms形式は国内農業生産工程管理場面で取り扱われる多様なデータの一表現形式で、XMLスキーマ規格に則って定義されている。
  • FIX-pms形式は既開発・普及推進中の作業計画・管理支援システム(略称「PMS」、2009年度成果情報)が取り扱う農業生産工程管理データおよびEU諸国で先行開発されているagroXML規格などを参考にして作成されており、国内農業生産における主要な生産工程管理データを取り扱うことができる(図1)。
  • PMSおよびPMSが管理する作業実績データを作業現場で入力できる携帯情報端末用ソフトウェア(FaWL:Android用とWindows Mobile用の2種類がある)はFIX-pms形式に対応しており、相互にFIX-pms形式のXML文書を用いてデータ交換を行う(図2)。
  • さらに、農業用クラウドを含む各種の農業用ソフトウェアがFIX-pms形式XML文書に対応することで、FIX-pms形式は多様な農業情報のデータ交換基盤の一つとなる(図2)。

成果の活用面・留意点

  • FIX-pmsスキーマ定義(XML文書)はFIX-pms形式によるデータ交換機能を農業用ソフトウェアに実装しようとする際にソフトウェア開発者が利用する。
  • 主要なソフトウェア開発環境ではXMLスキーマに対応した開発が可能となっているため、公開されているFIX-pms形式のXMLスキーマ定義に基づいて各種農業用ソフトウェアをFIX-pms形式入出力に対応させることができる。
  • FIX-pmsスキーマ定義(XML文書)はPMSサポートサイトに掲載・公開されている(URLは「発表論文等」の欄を参照)。
  • FIX-pms形式は今後も随時改訂されるため、最新情報については前項記載サイトを参照するのが望ましい。

具体的データ

図1 FIX-pms形式のデータ表現構造(主要部のみ)
図2 PMSとFaWLをはじめとするFIX-pms形式データ交換概念図

(吉田智一)

その他

  • 中課題名:多様な農業情報の効率的収集技術及び統合利用技術の開発
  • 中課題番号:160b0
  • 予算区分:委託プロ(アシスト)
  • 研究期間:2010~2011年度
  • 研究担当者:吉田智一、木浦卓治
  • 発表論文等:http://www.aginfo.jp/PMS/FarmXML/