品種特性データの操作性が向上した系譜図作成ソフトウェア;EvoTree PLUS

要約

系譜図自動作成ソフトウェア;EvoTreeを多種類の品種特性データ(文字列・数値)に対応できるデータ構造へ改変し、データの操作性・汎用性を高めた。改良したEvoTree PLUSはマニュアル・作物系譜データ等と共に一般公開した。

  • キーワード:EvoTree PLUS、操作性向上、系譜図切り替え表示、特性値による品種検索
  • 担当:IT高度生産システム・先進的統計モデリング
  • 代表連絡先:電話 029-838-8481
  • 研究所名:中央農業総合研究センター・情報利用研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

我々は、作物の育成記録の整理や系譜解析を効率化するため、系譜図を自動作成し品種特性を可視化する日本語ソフトウェア、EvoTreeを開発した(2009年度研究成果情報[研究・参考])。EvoTreeはカテゴリー番号で示した一種類の品種特性データ(例:青枯病への強度:0-5)しか扱うことができず利用場面が限定されていた。そこで、多種類の品種特性データ(文字列・数値)に対応できるようEvoTreeのデータ構造を改変し、幾つかの機能を追加してデータの操作性・汎用性を高める。また、広範な利用を促進するため改良したEvoTree PLUSをマニュアル・作物系譜データ等と共に一般公開する。

成果の内容・特徴

  • EvoTreeの主要機能は1)品種名・母本・父本情報から親子品種間を連結して複雑な品種育成系譜図を効率的に作成する、2)系譜図上の品種を特性により色分け表示する、3)血縁関係にある品種群(祖先から子孫まで)を一括抽出することである。
  • EvoTree PLUSは、品種特性を20種類、特性値として文字列・数値を扱え、データの操作性・汎用性が高い(図1)。また、異なる特性で色分けした系譜図の切り替え表示機能(図2)、複数の特性値による品種検索機能(例:全糖70-100・全酸含量11-14mg/gFWのイチゴ品種検索)を有し、特性値による品種比較が容易である。
  • EvoTree PLUSは、WEBサイト(http://evotree.job.affrc.go.jp/)において1月23日に公開され、マニュアル等とともに無償提供される。また、同時に提供されるEvoTree PLUS用作物系譜データ(イネ・ムギ・ダイズ・イチゴ・サツマイモ)は、研究者による系譜図の作成、農業従事者や一般消費者による育成経過の確認を容易にする。

成果の活用面・留意点

  • 従来の系譜に加えて特性記録の整理に利用できる。
  • 品種の血縁関係や特性の可視化により利用者は直感的に有用育種素材を発見したり,親子関係と品種特性の関連解析の手掛かりを得ることができる。
  • 旧バージョンEvoTreeは筑波事務所のサイトから公開され、利用者の主な所属は独立行政法人(35)・都道府県(17)・民間(7)・大学(4)、対象とする主な品目はイネ(15)、果樹(11:カンキツ・リンゴ等)、ムギ(7:コムギ・オオムギ)、糖質資源作物(3:テンサイ・サトウキビ)、バレイショ(3)、キノコ(3)、イチゴ(2)であった。
  • EvoTree PLUSのダウンロード件数は9件あり(2012.1.23~2012.1.25)、EvoTreeを活用するイネ、ムギ、果樹、イチゴの研究者に再度ダウンロードされた。

具体的データ

図1.TSV形式データの作成例
図2.EvoTree PLUSで作成したイチゴ系譜図

(竹﨑あかね)

その他

  • 中課題名:農業生産性向上に寄与する先進的統計モデリング手法の開発
  • 中課題番号:160c0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2011年度
  • 研究担当者:竹﨑あかね、木浦卓治、法隆大輔、林武司
  • 発表論文等:1)竹﨑ら(2011)育種学研究、13:19-24.
    2)「作物品種育成系譜図作成ソフトウェア;EvoTree PLUS」
    (職務作成プログラム;機構-A25)