地油生産に適したナタネ種子選別機
要約
新たに開発した丸孔と長丸孔の2段ふるい選別機は圧搾油の品質劣化の原因となる夾雑物や損傷粒を効率よく除去することができ、選別後のナタネ圧搾油の酸価を低下させることができる。
- キーワード:ナタネ、選別、酸価、バイオマス
- 担当:バイオマス利用・バイオマスエネルギー
- 代表連絡先:電話 029-838-8481
- 研究所名:中央農業総合研究センター・作業技術研究領域・生産体系研究領域
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
ナタネは収穫後に乾燥・調製が行われて搾油所等へ出荷されるが、搾油後に脱酸等の精製を行わない地油生産では、ナタネの選別精度が油の品質にあたえる影響が大きく、特に損傷粒等の混入は圧搾油の酸価を高めて品質劣化の原因となるので除去する必要がある。ナタネの選別には既存の米麦用やダイズ用の選別機も利用可能であるが、装置コスト、選別精度、および処理能力等の問題から導入することは困難であり、適切な装置が存在しないナタネ選別作業は生産者の労力負担となっている。そこで地油生産に適した新たなナタネの選別機を開発し、品質向上効果を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 本選別機は、整粒より大きな茎・莢や雑草種子などの夾雑物を除去する上段と、整粒より小さい、または圧扁した種子などの損傷粒を除去する下段の2段のふるいから構成される。上段は孔径φ2.5mm、ピッチ4.0mm、開孔率35.4%、有効ふるい面積0.20m2(W0.40m、L0.50m)の丸孔のパンチングメタル、下段はスリット幅1.5mm、長さ23.0mm、開孔率28.0%、有効ふるい面積0.40m2(W0.45m、L0.89m)の長丸孔のパンチングメタルである(図1)。
- 本選別機によってナタネ原料は、整粒、損傷粒、および夾雑物の3つに選別され、処理能力は毎時300~500kgである(図2)。選別後の整粒への夾雑物、損傷粒等の混入割合は0.1%以下である。
- 本選別機を利用してナタネ原料から夾雑物や損傷粒を除去することによって、選別後のナタネ圧搾油の酸価は選別前の圧搾油に比べて低くできる(図3)。
成果の活用面・留意点
- 本選別機は材料費25万円程度で作成でき、圧搾後に脱酸等の精製工程の無い小規模な地油生産の原料選別に有効活用できる。
- 本成果はナタネ品種キラリボシ(整粒の粒径1.7~2.0mm)での試験結果であるが、品種や栽培条件によっては整粒の粒径が異なるため、下段のパンチングメタルの長丸孔幅は種子にあわせて選択することが望ましい。
- 油分が34%程度含まれる損傷粒の潜在熱量は高く、バイオマス燃料用などの利用が可能であるが、油の酸価が高いことに留意する必要がある。
具体的データ
(加藤 仁)
その他
- 中課題名:未利用有機質資源のエネルギー変換システムの開発
- 中課題番号:220b0
- 予算区分:実用技術
- 研究期間:2009~2011年度
- 研究担当者:加藤仁、金井源太、松崎守夫、重田一人、薬師堂謙一
- 発表論文等:金井ら(2010)農業施設、31(2):87-94