高齢化地域での地元農産物の集荷・加工・販売・配達を支援する情報システム

要約

高齢化地域において課題となっている地元農産物の集荷、および買い物弱者への食料品配達を支援するために、地産地消を推進する組織が利用できる地元農産物の集荷から加工、販売、配達までを統合したWeb方式の情報システムである。

  • キーワード:地産地消、カット野菜、情報システム、フードデザート、集荷、配達
  • 担当:加工流通プロセス・食農連携
  • 代表連絡先:電話 029-838-8481
  • 研究所名:中央農業総合研究センター・農業経営研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

地域住民の高齢化が進行している地域では、高齢生産者の出荷が困難な状況や、食品スーパー等の撤退により高齢者等の食料品購入が困難になっているフードデザート現象がみられ、地元農産物の流通が停滞しつつある。これらの課題を解決するためには、生産者グループ・農業関係団体等の地元組織が地産地消を推進するために6次産業化し、地元農産物の流通を担う主体となることが重要である。そこで、2009年度成果情報「消費者に高鮮度カット野菜による食材セットを提供できる受注・販売システム」の生産者からの集荷と消費者等への配達面を拡張し、地産地消を推進する地元組織が利用できる地元農産物の集荷・加工・販売・配達支援情報システムを開発する。

成果の内容・特徴

  • 本システムは、地元農産物を生産者の要望に応じて集荷するとともに、消費者の注文にあわせて農産物をセット化および一次加工して配達するための、パスワード管理機能付きWebソフトウエアである。本システムは、集荷システム、受発注・加工システム、販売・配達システムの3つサブシステムで構成されている(図1)。
  • 集荷システムでは、自力では納品が困難な高齢生産者等がインターネット接続されたパソコンや携帯電話から依頼すると、出荷量が受発注・加工システムへ、集荷場所および指定の時間等の情報が集荷者へ伝達される(図2)。
  • 受発注・加工システムでは、消費者がインターネット接続されたパソコンや携帯電話により生鮮農産物(食品)およびカット野菜(食材セット)をシステムから注文すると、発注量等がエクセルシート上で自動計算され、生産者や加工者へ伝達される(図3)。
  • 販売・配達システムでは、受発注・加工システムから伝達された注文に対し、販売時に必要な情報が入った商品ラベル、消費者ごとに商品や金額が入った納品書、高齢者等の買い物弱者の依頼に対する配達先一覧のエクセルシートが作成され、販売者、配達者へ伝達される(図4)。
  • 当システムは、Webによる集荷依頼・配達依頼に加えて、Web利用が困難な生産者および消費者については、地元組織が集荷依頼・注文をFaxや電話にて受け付け、その内容をシステムに入力することができる。

成果の活用面・留意点

  • 本システムは、地産地消を推進する地元組織、中でも農産物直売所が普及対象であり、高齢化している地域やフードデザート現象がみられる地域が主な普及予定地域である。
  • 本システムは、茨城県北部の農産物直売所において稼働中である。他の直売所等で稼働させる場合には、現地で稼働しているシステムとの調整に30~50万円が必要である。
  • 本システムのマニュアルは、インターネットから利用可能である(2012年4月~)。

具体的データ

図1  地元農産物の集荷・加工・販売・配達支援情報システムの概略図図2 集荷システムの 画面
図3 受発注・加工システムの画面
図4 販売・配達システムの画面

(大浦裕二、中嶋晋作、山本淳子、河野恵伸)

その他

  • 中課題名:消費者ニーズの高度分析手法及び農業と食品産業の連携関係の評価・構築方法の開発
  • 中課題番号:330e0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2010~2011年度
  • 研究担当者:大浦裕二、中嶋晋作、山本淳子、河野恵伸
  • 発表論文等:大浦ら「農畜水産物材料セット受注装置、農畜水産物材料セット受注方法および農畜水産物材料セット受注プログラム」特開2011-9662