テグスと防鳥網の組み合わせで果樹園へのカラス侵入を抑える「くぐれんテグス君」

要約

棚仕立ての果樹園において、弾性ポールを用いてテグスを1m間隔で果樹園の天井部に張り、テグスと果樹園外周囲いのあいだの空間を防鳥網でふさぐことで、カラスの侵入を効果的に抑えられる。

  • キーワード:カラス、果樹、テグス、防鳥網、弾性ポール
  • 担当:基盤的地域資源管理・鳥獣害管理、徳島県立農林水産総合技術支援センター
  • 代表連絡先:電話 029-838-8481
  • 研究所名:中央農業総合研究センター・情報利用研究領域
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

収穫期の果樹ではカラスによる食害が起こる。食害防止には防鳥網の設置が確実であるが、資材費、設置労力、維持管理が問題となる。防鳥網より簡易な対策としてテグス設置が広く行われているが、テグスを設置しても侵入される場合があり、確実な対策となっていない。そこで、果樹園へのカラスの侵入行動に基づいて、テグスと防鳥網の組み合わせによる、簡易で有効なカラス侵入抑制技術を開発する。

成果の内容・特徴

  • 1m間隔で設置した弾性ポールの先端にテグスを結びつけ、果樹園の天井部に1m間隔でテグスを張る(図1)。テグス間隔が狭いほど侵入抑制効果は高まるが、カラスを用いた実験結果や設置経費・労力の点から、1m間隔が実用的である。長さ2mの直管パイプを0.5m地中に打ち込んで、その中に弾性ポールを差し込む方法で行うと、果樹棚の強度にかかわらず設置が可能であり、設置作業もしやすい。弾性ポールの使用により、脚立を使わずに高所へテグスを張ることができる。
  • 棚高より十分上にテグスを張るため、ナシ園では長さ4mで直径10.5mmの弾性ポールが適する。テグスの太さは0.52mm(10号)から0.74mm(20号)のものが使いやすい。テグスの展張距離が長くなる場合は、約30mごとに垂れ下がり防止の下支えにワイヤー等を入れる。
  • 果樹園外周を足場にした侵入を防ぐため、テグスと外周囲いの間の空間に、防鳥網を細い張り糸を使って張る(図1)。防鳥網は、網目が30mmで糸の太さが1000デニールの「強力防鳥網」が適している。
  • 中央農業総合研究センター構内に設置した15m×30mの模擬果樹園に餌台を配置して行った野外試験では、テグス設置期間中のカラスの侵入はわずかで、試験餌(ドッグフード)の消費量は1/50以下に抑えられる(図2)。
  • 徳島県のナシ園に設けた2ヶ所合計67aの現地実証ほ(図3)での聞き取り調査では、前年は10%あったカラス被害果率が、設置後は2ヶ所とも1%である。
  • 30m×100m(30a)の果樹園に設置する場合の資材費は12万円程度であり(表1)、固定型防鳥網の1/10以下である。

普及のための参考情報

  • 普及対象:カラス被害のある棚仕立ての果樹園で全国的に利用可能である。棚のない果樹園では、外周囲いを設けて同様に設置することが可能である。
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:カラスによる全国の果樹被害面積は約4千ha(2010年農水省統計)である。徳島県のナシ園に設置された2ヶ所の現地実証ほでは、カラス被害の軽減効果について高い評価を得ている。
  • その他:ホームページhttp://www.naro.affrc.go.jp/org/narc/chougai/で、『果樹園のカラス対策「くぐれんテグス君」設置マニュアル』を公開している。

具体的データ

図1 「くぐれんテグス君」の構造見取り図
表1 30m×100m(30a)の果樹園に設置する場合の資材費

(吉田保志子)

その他

  • 中課題名:野生鳥獣モニタリングシステム及び住民による鳥獣被害防止技術の確立
  • 中課題番号:420d0
  • 予算区分:産学官連携(2010年度)、基盤、実用技術「営農管理」(2007~2009年度)
  • 研究期間:2009~2011年度
  • 研究担当者:吉田保志子、佐伯緑、百瀬浩、松家義克(徳島県)
  • 協力機関:大津農業協同組合、徳農種苗株式会社
  • 発表論文等:「くぐれんテグス君」設置マニュアル