水田土壌のカリウム供給力の向上による玄米の放射性セシウム濃度の低減
要約
加里の増施により、玄米の放射性セシウム濃度や移行係数は低減する。土壌の交換性加里が高いほど玄米への移行係数は低下する。放射性セシウムによる汚染が懸念される地域では、緊急対策として、交換性加里25mgK2O/100gを目標として土壌改良する。
- キーワード:放射能汚染、セシウム、コメ、カリウム、移行係数
- 担当:総合的土壌管理・土壌養分管理
- 代表連絡先:電話 029-838-8481
- 研究所名:中央農業総合研究センター・土壌肥料研究領域、農業環境技術研究所、福島県農業総合センター・作物園芸部、茨城県農業総合センター・農業研究所・環境・土壌研究室、栃木県農業試験場・土壌作物栄養研究室、群馬県農業技術センター・環境作物部、東部地域研究センター
- 分類:普及成果情報
背景・ねらい
東京電力福島第一原子力発電所の事故により、放射性物質による農畜産物の汚染が広がっている。そこで、水稲栽培におけるカリウムの増施効果を検討するとともに、長期圃場試験の玄米中放射性セシウム濃度を調査し、我が国の主食であるコメの放射性セシウム濃度を低減させるための耕種的対策法を示す。
成果の内容・特徴
- 加里を慣行施肥の3倍量施用すると、粘土鉱物としてバーミキュライトを多く含み放射性セシウムの移行係数が低い土壌を除き、玄米の放射性セシウム濃度や移行係数(水分15%玄米の放射性セシウム濃度Bq/kg÷作土の放射性セシウム濃度Bq/kg乾土)は低下する(図1)。
- 牛ふん堆肥の長期連用により、土壌の交換性加里が高まると、玄米の放射性セシウム濃度や移行係数は低下する(図2)。一方、加里を30年間無施用とした土壌では、玄米への移行係数は著しく増加する。
- 玄米への移行係数は、粘土鉱物としてバーミキュライトを多く含む土壌を除き、土壌の交換性加里が増加するほど低下する(図3)。
- 交換性加里を25mgK2O/100g以上としても低減効果が低いこと(図3)、および塩基バランスを考慮し、交換性加里25mgK2O/100gを目標とした土壌改良が緊急対策として推奨される。
普及のための参考情報
- 普及対象
行政機関、各県農業研究機関、農業技術普及指導機関、水稲栽培農家
- 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等
放射性セシウムで汚染された地域の水田
- その他
プレスリリース(2012年2月24日)
加里の施用効果は土壌の粒径組成、粘土鉱物組成によって異なる可能性がある。
具体的データ
(加藤直人、伊藤純雄)
その他
- 中課題名:土壌・資材の評価と肥効改善による効率的養分管理技術の開発
- 中課題番号:151a1
- 予算区分:戦略推進費
- 研究期間:2011年度
- 研究担当者:加藤直人、伊藤純雄、木方展治(農環研)、藤村恵人(福島県農総セ)、池羽正晴(茨城県農総セ)、宮崎成生(栃木県農試)、斎藤幸雄(群馬県農技セ)、廣岡政義(群馬県農技セ)