プラウを用いた反転耕による放射性物質に汚染された表層土壌の埋却
要約
ジョインタ付きプラウによる反転耕により、表層の放射性物質を土壌中に埋却することで放射線量率が低減する。トラクタによる踏圧、ハローによる砕土、レベラーによる均平を実施することで、無代かきで水稲の移植栽培ができる。
- キーワード:プラウ、放射能、反転耕、除染、空間線量率
- 担当:中央農業総合研究センター・生産体系研究領域
- 代表連絡先:電話 029-838-8481
- 研究所名:中央農業総合研究センター・生産体系研究領域
- 分類:普及成果情報
背景・ねらい
東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所の事故により、放射性物質が降下した圃場の除染対策において、排土が出ない方法としてプラウによる反転耕が考えられる。しかし、プラウ耕については、これまで除染対策としての検討はなされてこなかったことから、反転耕が空間線量率に及ぼす影響を把握するとともに、表層の放射性物質が反転耕によってどのように土中に埋め込まれるかを明らかにする必要がある。
成果の内容・特徴
- 水田において反転耕をジョインタ付きボトムプラウ(3連、20インチボトムプラウ)により耕深30cmで実施した後、トラクタによる踏圧、パワーハローによる砕土、レーザーレベラーによる均平を実施し、無代かきで栽培すれば、イネの移植栽培ができる。反転耕の一連の作業に係る能率は90分/10a程度である(図1)。
- ジョインタ付きボトムプラウにより放射能に汚染された表土を反転した結果、1mの高さで測定した空間線量率は、処理前に1.6±0.02μSv/h (n=12) であったものが、処理後には0.5±0.01μSv/h (n=12) に低下する。
- 表層にあった放射性セシウムは、ジョインタ付きボトムプラウにより耕深30cmで反転することにより、15~20cmの深さに最も多くの放射性セシウムが存在するようになる(図2)。
- 畑では二段耕プラウにより表層の放射性セシウムを地下に埋却することができる。耕深45cmで反転することで、25~30cmの深さに最も多くの放射性セシウムが存在するようになる(図3)。
普及のための参考情報
- 普及対象 放射性物質が降下した圃場のうち、作土層の放射性セシウム濃度が5,000Bq/kg乾土以下の水田および普通畑で、放射性物質が降下してから深耕を実施していない圃場
- 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等 (福島県内でおよそ58,000ha)
- その他 2011年9月14日農林水産省プレスリリース「農地土壌の放射性物質除去技術(除染技術)について」
- 空間線量率の低下、放射性セシウムの埋却程度は、未耕耘の圃場でプラウ耕を実施した場合のデータである。
具体的データ
(渡邊好昭)
その他
- 中課題名:
- 中課題番号:
- 予算区分:戦略推進費
- 研究期間:2011年度
- 研究担当者:渡邊好昭、藤森新作(機構本部)、スガノ農機株式会社