ダイズ黒根腐病菌の土壌からの特異的検出法

要約

ダイズ黒根腐病菌は、土壌を0.25mmおよび0.038mmのふるいに通し、0.038mmのふるい上に残った土壌残渣を表面殺菌し、新規検出培地と混合し、25°Cで8日間培養することで定量的に検出することが可能である。

  • キーワード:ダイズ黒根腐病菌、検出培地、ふるい分け法
  • 担当:新世代水田輪作・大豆安定多収
  • 代表連絡先:電話 029-838-8481
  • 研究所名:中央農業総合研究センター・病害虫研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

黒根腐病はダイズ栽培上重大な被害を生じる立枯性病害であるが、発生生態は不明な部分が多く、また有効な防除法も開発されていない。これらを解決するには、ダイズ黒根腐病菌の動態解明や被害評価が必要である。それには土壌中の菌密度の把握が必要不可欠であるが、現在までに菌密度計測法は確立されていない。そこで黒根腐病菌Calonectria ilicicolaの土壌中からの特異的検出法を新たに開発する。

成果の内容・特徴

  • 黒根腐病菌の新規検出培地YLS培地の組成は、培地1Lあたり、L-ソルボース20g、イーストエキストラクト4g、フルトラニル12.5mg、チアベンダゾール1.5mg、クロルテトラサイクリン塩酸塩40mg、クロラムフェニコール10mg、タージトールtypeNP-7を1mlおよび寒天20gである。
  • 検出方法は以下のとおりである。圃場内5か所(深さ0~15cm程度)から採集・混合したサンプル土壌5g(生重量)を300mlの三角フラスコに入れ、100mlの滅菌蒸留水を添加し、200rpmで20分間振とうし、蒸留水中に土壌を拡散させる。この懸濁液を、0.038mmのふるい上に重ねた0.25mmのふるいの上から流水とともに通す。0.038mmのふるい上に残った土壌残渣を有効塩素濃度0.25%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液に30秒間浸す。土壌残渣を滅菌蒸留水でよく洗い、回収し、滅菌蒸留水を用いて50mlにする。このうち400ulを10枚の9cmシャーレそれぞれに分注し、その上から約50°Cに冷ました検出培地を注ぐ。固化した後、シャーレを25°Cで8日間培養し、観察する(図1)。黒根腐病菌は培養5日後から菌叢が濃いオレンジ色に着色するため、簡易に同定可能である(図2)。
  • 新規検出法で検出した人工汚染土壌中の黒根腐病菌数は、土壌中の微小菌核数に比例するため、本手法は土壌中から定量的に黒根腐病菌を検出可能であり、過去に開発された検出方法と比較して黒根腐病菌の検出効率が高い(図3)。また、本手法は自然発生圃場土からの黒根腐病菌の検出においても有効である(表1)。

成果の活用面・留意点

  • 本手法は黒ボク土および重粘質土壌において検出可能であることを確認している。
  • 土壌の種類によって黒根腐病菌の検出効率は異なる可能性がある。

具体的データ

図1~3,表1

その他

  • 研究課題名:根粒機能を活用した大豆安定多収栽培法の開発
  • 中課題整理番号:111a2
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2011~2012年度
  • 研究担当者:越智直、仲川晃生
  • 発表論文等:Ochi S. and Nakagawa A. (2012) Journal of General Plant Pathology. 78:147-150