ソフトタイプ米菓に適した低アミロース水稲新品種「亀の蔵」

要約

「亀の蔵」は多収で耐冷性が強く、精米のアミロース含有率が3%程度の品種である。低アミロース性を生かしたソフトタイプ米菓への利用が期待される。

  • キーワード:イネ、低アミロース、加工用、米菓、亀の蔵、せんべい
  • 担当:作物開発・利用・水稲品種開発・利用
  • 代表連絡先:電話025-523-4131
  • 研究所名:中央農業総合研究センター・作物開発研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

近年、米粉や米菓等の加工用途向けの新たな原料米の生産供給の重要性が高まっている。米菓には、うるち米を原料とするせんべい等と、もち米を原料とするかきもち、あられ等があるが、米菓業界では新たな需要を創出するため、既存製品と差別化できるソフトタイプせんべい等の新商品の開発が求められている。せんべいを作る際には、薄く延ばした生地から丸いせんべいの形に型抜きする工程において、もち米では形が崩れて成型が困難なため、うるち米を使う。しかし、通常のうるち米だけでは、もち米の柔らかさを持つソフトタイプの米菓はできない。そこで、低アミロース米の性質を利用し、作業性と柔らかな食感を両立しうるソフトタイプ米菓用品種の開発を目指した。

成果の内容・特徴

  • 「亀の蔵」は、多収の低アミロース米品種の育成を目標として、低アミロース米の「東北172号(後の「たきたて」)」と多収系統「収6374」を交配して選抜した品種である。
  • 育成地(新潟県上越市)での出穂期・成熟期は、「あきたこまち」と同等かやや早い、早生品種である(表1)。
  • 「あきたこまち」に比べて、稈長はほぼ同じで、穂長は長く、穂数は多い。収量(精玄米重)は「あきたこまち」より多く、多肥栽培でも「あきたこまち」より多収である。玄米千粒重は「あきたこまち」よりやや重く、アミロース含有率が低いために玄米は白濁する(表1)。
  • いもち病真性抵抗性遺伝子はPiaおよびPiiを持つと推定され、圃場抵抗性は、葉いもちは"中"、穂いもちは"やや強"である。縞葉枯病には"罹病性"である。障害型耐冷性は"強"、穂発芽性は "やや易"である(表2)。
  • 精白米のアミロース含有率は、年次間で1.4~4.5%の幅で変動がみられるが、平均では3%程度で、「あきたこまち」より16ポイントほど低い(表3)。
  • ソフトタイプ米菓製造時における延し行程の作業性は、国産のうるち米原料と同等である。製品のふくらみは良好で、口溶けが良く、米の風味、甘味が強いソフトタイプ米菓の製造が可能である(表4)。

成果の活用面・留意点

  • ソフトタイプの米菓への利用が期待される。
  • 栽培可能な地域は「あきたこまち」の作付ができる東北中南部、北陸、関東以西である。
  • 多収であるが、耐倒伏性が“中”のため、多肥栽培では倒伏の危険がある。
  • 穂発芽性が“やや易”であるため、倒伏を防ぎ、適期刈り取りに努める。
  • 葉いもち圃場抵抗性は“中”なので、適宜防除を行う。
  • 縞葉枯病には“罹病性”であるため、常発地では防除を行う。

具体的データ

表1~4

その他

  • 中課題名:米粉等加工用・業務用水稲品種の育成及び米の未利用成分利用技術の開発
  • 中課題番号:112a0
  • 予算区分:交付金、委託プロ(加工プロ4系)
  • 研究期間:2001~2012年度
  • 研究担当者:山口誠之、笹原英樹、松下景、重宗明子、長岡一朗、三浦清之、上原泰樹、後藤明俊、小牧有三
  • 発表論文等:三浦ら「亀の蔵」品種登録出願2012年6月8日(第27101号)