米菓用に適した多収水稲糯新品種候補系統「北陸糯216号」

要約

水稲「北陸糯216号」は寒冷地南部では早生で、米菓加工適性が高い多収の糯系統である。加工用糯米としての利用が期待されている。

  • キーワード:イネ、糯、米菓、多収、北陸糯216号
  • 担当:作物開発・利用・水稲品種開発・利用
  • 代表連絡先:電話 025-523-4131
  • 研究所名:中央農業総合研究センター・作物開発研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

近年、加工用米の需要が伸びており、それに伴って加工用米に適する品種が求められている。米菓業界でも、国産米を原料とした米菓に適する加工用糯品種への要望が高くなっている。この糯品種には加工適性が優れていることのほか、原料を安定供給できる多収性が求められる。そこで、米菓業界の要望に応えるために、米菓加工適性があり、安定して収量性が高い糯品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 「北陸糯216号」は米菓加工適性があり、多収である糯品種の育成を目標として、中生で多収の「北陸糯175号」と早生で多収の「奥羽糯373号」の交配後代から育成された系統である。
  • 「ヒメノモチ」と比べて、出穂期は同程度で成熟期はやや遅く、育成地では“早生の早”に属する(表1)。
  • 「ヒメノモチ」と比べて、稈長、穂長は同程度、穂数はやや多い“中間型”の草型である。ふ先色は“赤”である。耐倒伏性は「ヒメノモチ」と同程度である(表1)。
  • 玄米千粒重は「ヒメノモチ」よりわずかに軽いが、「ヒメノモチ」に優る収量性があり、標肥栽培で13%、多肥栽培では8%多収である(表1)。
  • いもち病真性抵抗性遺伝子はPiaを持つと推定され、圃場抵抗性は、葉いもち、穂いもちともに“やや強”である。障害型耐冷性は“中”、穂発芽性は“中”である(表1)。
  • アミログラム特性の最終粘度、コンシステンシーが「たつこもち」より大きく、硬化性は高い。米菓(かきもち)は、「たつこもち」と比べて歯ごたえがあり、歯ごなれが良い(表2)。硬化性が高いために米菓の表面に細かいヒビが生じ、食感の改善が期待できることから、米菓加工適性は高い。
  • 現地栽培試験(新潟県新潟市)では、45.9~59.8kg/aの収穫量が得られている(表3)。

成果の活用面・留意点

  • 新潟県内で加工用糯米として、平成26年度に100ha程度の作付けが計画されている。
  • ふ先色が“赤”であるため、一般の粳品種(ふ先色が“白”)と区別ができる。
  • 適応地域は「ヒメノモチ」等の熟期の作付けが可能で、冷害の危険性が少ない東北中南部、北陸及び関東以西である。
  • 多収であるが、耐倒伏性が“中”のため、多肥栽培での倒伏に注意する。
  • 穂発芽性が“中”のため、適期刈り取りに努める。
  • 縞葉枯病には“罹病性”であるため、常発地では防除を行う。

具体的データ

 表1~3

その他

  • 中課題名:米粉等加工用・業務用水稲品種の育成及び米の未利用成分利用技術の開発
  • 中課題番号:112a0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2000~2012年度
  • 研究担当者:山口誠之、笹原英樹、松下 景、重宗明子、長岡一朗、三浦清之、上原泰樹、 後藤明俊、小牧有三