AM菌非宿主作物の後作・間作への緑肥導入による次作物の収量の改善

要約

アーバスキュラー菌根菌(AM菌)と共生しない作物を栽培すると、次作物のAM菌感染、収量が低下する。非宿主であるキャベツ収穫後の緑肥(AM菌宿主)の導入、キャベツ栽培時の緑肥の間作により、次作物のAM菌感染、収量を高めることができる。

  • キーワード:アーバスキュラー菌根菌(AM菌)、緑肥、後作、間作、キャベツ
  • 担当:総合的土壌管理・土壌養分管理
  • 代表連絡先:電話 029-838-8481
  • 研究所名:中央農業総合研究センター・土壌肥料研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

AM菌と共生しない作物(非宿主:アブラナ科、アカザ科、タデ科等)の作付けや裸地管理(休閑)により、絶対共生菌であるAM菌の密度が低下する。AM菌は、作物のリン吸収を促進する働きを持つことから、非宿主であるキャベツなどの跡地では、次作物(宿主)のAM菌感染、リン吸収、生育・収量が宿主跡地よりも劣る。 キャベツの次作物について、AM菌感染、生育・収量を改善するため、キャベツ収穫後にAM菌の宿主作物を後作緑肥として導入し、一度、減った土着AM菌を増やす方策を検討する。また、キャベツ収穫後すぐに次作物を栽培する場合には、間作緑肥を導入し、土着AM菌密度を低下させずにキャベツを栽培することができるか調べる。

成果の内容・特徴

  • キャベツ収穫後に春まで裸地にする区(CA-FL)とヒマワリ(AM菌宿主の緑肥)を栽培する区(CA-SF)、また、夏まで裸地とした後にソバ(非宿主の緑肥)を栽培する区(FL-BW)とエンバク(宿主の緑肥)を栽培する区(FL-OT)を設け、翌年トウモロコシを栽培し、トウモロコシ(宿主)後(Maize)と比較する(表1)。すると、キャベツ後に緑肥を導入しない、あるいは、非宿主の緑肥を導入した場合に、トウモロコシのAM菌感染と収量が低い(図1)。一方、夏までキャベツ栽培あるいは裸地管理した区でも、その後AM菌宿主であるヒマワリやエンバクを緑肥として導入すると、土壌中のAM菌密度が高まり、翌年のトウモロコシのAM菌感染(図1)、リン吸収(データ略)、生育・収量(図1)が、宿主(トウモロコシ)後と同程度に高まる。
  • キャベツ栽培区(CA)、キャベツにAM菌宿主のベッチ(CA+VT)、アカクローバ(CA+RC)、シロクローバ(CA+WC)を間作する区、アカクローバ栽培区(RC)、AM菌宿主のアズキ栽培区(AZ)で次作にコムギを栽培する(表2)と、キャベツのみの跡地では、アズキなどの宿主作物跡地に比べて収量が低い(図2)。一方、キャベツ栽培時にAM菌と共生する緑肥を間作すると、土壌中のAM菌密度が維持されるため、次のコムギのAM菌感染(図2)、リン吸収(データ略)、生育・収量が良くなる(図2)。
  • 以上より、非宿主作物の栽培時に、時間的、空間的にAM菌宿主を緑肥として導入することで、土着AM菌密度が維持され、次作物の収量が宿主作物跡地並みに高くなる。

成果の活用面・留意点

  • リン栄養を考慮した作付順序の決定、緑肥の種類の選定に活用できる。
  • 緑肥の選定にあたっては、病害虫など、他の要因も考慮する。
  • 本試験は、有効態リン酸が13-15 mg P2O5/100 g(北海道土壌診断基準値10-30 mg P2O5/100 gの範囲内)の北海道の黒ボク土圃場で行った結果である。キャベツ、トウモロコシには10 kg P2O5/10aのリン酸を、コムギには7kg P2O5/10aのリン酸を施用している。
  • 本試験では、有機物すき込み量の影響を低減するため、緑肥作物の地上部をすき込まずに圃場外に持ち出しているが、すき込んだ場合でも、同様の効果が期待できる。

具体的データ

 表1~2,図1~2

その他

  • 中課題名:土壌・資材の評価と肥効改善による効率的養分管理技術の開発
  • 中課題番号:151a1
  • 予算区分:委託プロ(省肥料)、交付金
  • 研究期間:2009~2012年度
  • 研究担当者:唐澤敏彦、建部雅子
  • 発表論文等:Karasawa T. and Takebe M. (2012) Plant Soil 353:355–366