米ぬか施用によるコナギ抑草効果に及ぼす土壌、施用量および作期の影響

要約

米ぬか施用によるコナギ抑草効果は土壌条件や施用量によって大きく変動するが、作期が遅いほど効果が安定する傾向がある。また、どの条件でも処理後の土壌溶液の電気伝導度(EC値)と高い相関があり、EC値が高いと抑草効果が高い。

  • キーワード:有機水稲栽培、雑草防除、コナギ、米ぬか、電気伝導度
  • 担当:環境保全型農業システム・有機農業体系
  • 代表連絡先:電話 029-838-8481
  • 研究所名:中央農業総合研究センター・生産体系研究領域、土壌肥料研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

水稲有機栽培では雑草防除が最大の課題であり、除草剤を使わずに安定的に雑草を抑制する抑草方法の開発が求められている。米ぬか施用は代表的な抑草方法の一つであるが、必ずしも安定した効果が得られる訳ではなく、その変動要因には不明な点が多い。本研究では、有機水稲作の成功事例に作期が遅い傾向のあることに着目し、水稲有機栽培で最も問題となるコナギを対象として、作期の違いが効果の変動に与える影響を調べる。また、米ぬかの抑草効果の変動に影響する環境要因ついて検討する。

成果の内容・特徴

  • 米ぬか施用によるコナギ抑草効果は土壌によって効果が大きく変動するが、遅い作期で効果が安定する傾向がある(図1)。
  • 100kg/10aの米ぬか施用量では200kg/10aの場合よりコナギ抑草効果が大きく変動するが、ともに遅い作期で効果が安定する傾向がある(図2)。
  • 室内実験で米ぬかを加えた土壌から抽出した溶液中でコナギ発芽試験を行うと、溶液の電気伝導度(EC値)と発芽率との間に高い相関関係が認められ、土壌の種類に関わらずEC値が高い条件でコナギの発芽が抑制される(図3)。
  • 屋外ポット試験で米ぬか散布1週間後の土壌表層溶液のEC値を測定すると、EC値とコナギ残存本数との間に高い相関関係が認められ、米ぬか施用量や作期に関わらずEC値が高い条件でコナギ抑草効果が高い(図4)。

成果の活用面・留意点

  • 米ぬか施用によって雑草防除を行う場合に作期選定の参考とする。
  • EC値を上昇させる要因には、米ぬかの分解に伴って上昇する二価鉄イオンや有機酸などが考えられる。
  • 米ぬか施用後の地温や酸化還元電位には、EC値に見られるようなコナギ抑草効果との高い相関関係が認められない。

具体的データ

 図1~4

その他

  • 中課題名:有機農業の成立条件の科学的解明と栽培技術の体系化
  • 中課題番号:153b0
  • 予算区分:交付金、科研費
  • 研究期間:2008年度?2012年度
  • 研究担当者:内野彰、野副卓人、三浦重典、青木大輔、吉田修一(宮城古川農試)、大川茂範(宮城古川農試)、鈴木幸雄(福島農総セ)、佐々木園子(福島農総セ)、齋藤隆(福島農総セ)、新妻和敏(福島農総セ)、中山幸則(三重農研)、神田幸英(三重農研)
  • 発表論文等:Nozoe, T. et al.(2012) Soil Sci. Plant Nutr. 58 (2):200-205