1-kmメッシュ農業気象データとその高度利用環境
要約
週間予報を含み、毎日更新される通年日別メッシュ農業気象データを処理して、グラフや分布図を作成できる環境を開発した。環境は、インターネット上のデータ配信サーバーとエクセル等利用者のPCで実行されるソフトウエアで構成され、全国で利用できる。
- キーワード:メッシュ、農業気象、週間予報、Python、OPeNDAP
- 担当:気候変動対応・気象-作物モデル開発
- 代表連絡先:電話 029-838-8481
- 研究所名:中央農業総合研究センター・情報利用研究領域
- 分類:普及成果情報
背景・ねらい
気象庁の実況値や数値予報等を基に全国について作成・更新されるメッシュ農業気象データは、例えば、出穂日の予測から施肥、防除時期を調整したり、気温推移の予測から登熟障害の発生を警戒するなど、気象災害/病虫害の警戒や栽培支援情報の作成に利用価値が高いが、予測を含むことから即時的な処理が必要な一方でデータ量が多く、数値処理やデータ可視化に習熟した者以外には利用が困難であった。そこで、全国の幅広い農業分野でこのデータが活用されるよう、最小限の学習でデータを高度に利用できる環境を開発する。
成果の内容・特徴
- 農業気象データは、観測値、予報値、平年値が組み合わされた通年の日別値として全国の基準国土三次メッシュ(約1km)について作成され、日々更新される。日最高/平均/最低気温、日平均湿度、全天日射量、日照時間、日降水量、下向き長波放射量が作成され、利用可能である。
- 利用環境の模式図を図1に示す。利用者は、インターネット上のデータ配信サーバーからメッシュ農業気象データを取得し、利用者の計算機にインストールされたマイクロソフト・エクセルやプログラミング言語Pythonを用いて処理し、数表やグラフ、分布図などの結果を得る。処理結果の複雑な表現は可視化ソフトウエアIDVで行う。
- エクセルを利用する場合は、データをCSVファイルのダウンロードまたはWebクエリ(エクセルの機能)で取得する(図2)。Pythonを利用する場合は、OPeNDAP(通信規約)で取得する。何れの場合も、データの範囲と期間を利用者が任意に定めることができる。
- Pythonプログラムとして提供されるデータ処理のツールを用いることで、出穂予測など利用者独自のプログラムを効率的に開発することができる。このプログラムを実行することにより、最新の予報データが反映された図表が即時的に得られるようになる。
- さらに、処理結果をIDVに受け渡すと、分布図の色調のインタラクティブな変更や分布の日変化のアニメーション、分布図と時系列グラフのペア表示、市町村境界のオーバーレイなど、高度な可視化を行うことができる(図3)。
- 利用者のサポートとデータサーバー運用情報等の周知のために、メーリングリストとWikiが運用されている。
普及のための参考情報
- 普及対象:全国の農業試験研究・普及機関職員等
- 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:全国。 2012年現在、食木害虫の発生予測、ネギべと病防除、斑点米カメムシの分布推定、果樹園地の気象把握、水稲生育診断・生育予測、作況の解析、最適作期策定他の目的で、8県に普及した。
- 利用には申請が必要である。申請様式は末尾のURLより入手できる。
- このデータは一般の天気予報とは異なるため、農業分野以外には利用できない。
- このデータを利用して作成した情報を販売することはできない。
- PythonならびにIDVは、オープンソースソフトウエアである。
具体的データ
その他
- 中課題名:気候変動適応型農業を支援する作物モデルの開発
- 中課題番号:210a1
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2011~2012年度
- 研究担当者:大野宏之、佐々木華織、吉田ひろえ、中園 江、中川博視
- 発表論文等:マニュアル「メッシュ農業気象データ利用の手引き」にて公開予定(3月)