農産物の購入・調理・食事プロセスを把握できる食行動データ収集・分析システム
要約
消費者の農産物(食品)の購入・調理・食事データをWeb上で収集するとともに、定量データ分析及び定性データ分析を行うシステムである。農産物消費の特徴の把握や消費拡大方法の提案などに活用できる。
- キーワード:食行動データ、消費者、Web、農産物、定量・定性分析
- 担当:加工流通プロセス・食農連携
- 代表連絡先:電話 029-838-8481
- 研究所名:中央農業総合研究センター・農業経営研究領域
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
多様化したライフスタイルの中での農産物の利用実態や消費者ニーズの解明には、統計データやアンケート調査だけでは不十分であり、特に規格・品質や用途が多様な農産物では、購入から調理、食事に至る一連の食行動を過程全体に渡って捉える必要がある。そこで、消費者がWebから食品の購入や食事等の食行動を簡単に入力することで食行動データを収集し、得られた定量データ及び定性データを解析するためのシステムを開発する。
成果の内容・特徴
- 本システムは、食行動データ収集システムと分析システム(定量データ分析と定性データ分析)から成る(図1)。収集システムはパスワード管理機能付きのWebソフトウエアで、消費者がWeb上のシステムにアクセスし入力する。入力されたデータはサーバー上に蓄積され、そのデータをCSV形式でダウンロードして分析システムに用いる。
- 収集システムでは、各種消費者属性や食材在庫等の入力(基本登録)の後、日々の買い物(購入先、価格等商品属性、選択理由等)と食事(メニュー、使用食材、メニュー選択理由等)を入力する(図2)。購入食材は在庫登録され、食事ごとに使用食材を入力すると在庫量も減少するため、食材の利用過程が把握できる。また、購買理由やメニュー選択理由、調理後の食材の評価を記録することで消費者の意識も併せて把握できる。
- 定量データ分析システムでは、消費者属性や購買・食事データから分析したい項目を選択し、マイクロソフト社エクセルのピボット機能によりクロス集計等の基礎集計を行う。また、データセット(CSV形式)が作成され、定量データを用いた高度な分析(多変量解析)に利用できる。分析例(表1)では、朝食では簡単な野菜料理の有無、夕食ではあと1品野菜料理を作るかが世帯の生鮮野菜購入量に影響しており、消費拡大には「朝食に一品野菜を添えよう」等の具体的な提案が求められることが明らかになった。
- 定性データ分析システムでは、開発済みのテキストマイニングソフトウエア「二値化くん」(2009年度成果情報)により、食品の購買理由やメニュー選択理由などの文章データを形態素へ分解するとともにキーワードの抽出・二値化を行い、キーワードの出現頻度等の基礎集計を行う。また、データセット(CSV形式)が作成され、定性データを用いた高度な分析に利用できる。分析例(図3)では、野菜や肉、魚等は作ろうとする料理を想定し、その材料として購入されていることから、ある野菜の購買を促す場合には産地や機能性に加え、その野菜を用いた料理の提案が有効である可能性が示された。
成果の活用面・留意点
- 試験研究機関等において農産物の利用実態と消費者属性・意識を結びつけて把握することで、消費の特徴の把握や、農産物の販売方法、消費拡大方策の提案等に活用できる。
- 本システムの利用には、管理者(開発者)への申請が必要である。管理者はマルチインスタンス機能を用いて申請者ごとにパスワードを割り当て、利用を許可する。
具体的データ
その他
- 中課題名:消費者ニーズの高度分析手法及び農業と食品産業の連携関係の評価・構築方法の開発
- 中課題番号:330e0
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2008~2012年度
- 研究担当者:山本淳子、大浦裕二、磯島昭代、河野恵伸、小野史
- 発表論文等:
1)山本ら(2009)フードシステム研究、16(3):100-105
2)小野ら(2011)フードシステム研究、18(3):203-208
3)磯島ら(2011)東北農業研究、64:169-170