新規就農者の支援機関による実績評価・改善計画を支援するシステム「CAPSS」

要約

営農や財務の計画案の作成を支援し、計画や実績の財務分析結果や標準的な指標データを提供するシステムである。新規就農計画の検討、経営実績の分析、経営改善案の検討、改善計画の策定などのマネジメントサイクルに沿った支援活動に利用できる。

  • キーワード:マネジメントサイクル、経営指標データベース、経営計画、経営診断
  • 担当:経営管理システム・経営管理技術
  • 代表連絡先:電話 029-838-8481
  • 研究所名:中央農業総合研究センター・農業経営研究領域
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

新規就農者等の経営支援担当者は、その経営の発展のために、新規就農計画を検討するとともに、就農後の経営実績評価(経営診断)、改善案の検討、改善計画の策定と実施というマネジメントサイクルの各過程で、新規就農者等と意見を交換しながら支援することが求められている。そこで、これまで開発してきた営農計画策定支援システム「Z-BFM」(2011年度主要普及成果)とWeb版「農業経営診断サービス」(2012年度研究成果)を連携させるプログラム(財務計画モジュール)を開発し、経営実績や計画案の客観的評価等に利用可能な標準値データベースも含めた経営実績の分析から改善計画の策定までの活動を支援するシステム(「CAPSS;Check-Act-Plan Support System」)を構築する。

成果の内容・特徴

  • 「CAPSS」は、「Z-BFM」、財務計画モジュール、Web版「農業経営診断サービス」、標準値データベース等を連携利用することで、経営実績の分析から改善計画の策定までの経営支援活動を支援する(図1)。
  • 「CAPSS」は、マネジメントサイクルに沿って以下のように利用できる(図2)。新規就農計画等の検討では、標準値データベースの技術指標等で計画の技術的な実行可能性の確認や、「Z-BFM」で労働時間制約等を踏まえた計画の実行可能性を確認する。経営実績の分析では、Web版「農業経営診断サービス」による経営実績の分析や、財務指標等の標準値を利用した経営課題を整理する。経営改善案の検討では、「Z-BFM」で改善案を検討し、それを財務計画モジュール等で財務面から分析・評価する。
  • 新規就農者が労働時間制約等を考慮した計画を策定することは困難であるが、「Z-BFM」と改良した標準値データベースとの連携利用で、労働制約等を考慮した営農計画を簡易に作成できる。一方、「Z-BFM」のみでは財務安全性の検討が不十分であったが、財務計画モジュールとの連携利用で、「Z-BFM」の営農計画を踏まえた財務諸表等を計画し、それをWeb版「農業経営診断サービス」で財務分析することで、財務安全性までを考慮した経営計画を策定できる。
  • 標準値データベースは、財務指標(63類型区分)、技術指標(73種類)、経営指標(2,151種類)に関するデータを内蔵する。これまでは、これらの指標データのみの利用はできなかったが、「CAPSS」では、それを利用者の目的に応じて活用できる。例えば、利用者は、財務指標の標準値を任意に取得し、それを用いた独自の財務分析ができる。

普及のための参考情報

  • 普及対象:日本政策金融公庫等の金融機関で与信業務や顧客支援業務を担当する職員、地域農業の営農支援活動を担う普及指導員や農協職員、農業経営者である。
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:日本政策金融公庫農林水産事業の専門職員が常駐する支店(48店)や農協のTAC担当者(約1,500人)での利用を見込んでいる。
  • その他:一連のツールは、利用マニュアルとともに農研機構経営管理システムのWebサイトからダウンロードや利用ができる。

具体的データ

図1~2

その他

  • 中課題名:新規参入経営支援のための経営管理技術の開発
  • 中課題整理番号:114c0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2011~2013年度
  • 研究担当者:松本浩一、佐藤正衛、大室健治
  • 発表論文等:
    1)大室(2013)農業経営通信、255:8-9
    2)松本(2014)農業経営通信、259:2-3