ダイズ品種「エンレイ」の縮緬じわが生じた種子の吸水・発芽特性

要約

縮緬じわ粒(以下、しわ粒)としわの生じていない種子(以下、整粒)では、種子の部位ごとの吸水速度が異なる。種子を冠水処理した時に生じる冠水障害の程度はしわ粒でより重度となる。種子活力はしわ粒が整粒よりも低い。

  • キーワード:ダイズ、しわ粒、種子吸水、発芽、冠水障害
  • 担当:新世代水田輪作・重粘地水田輪作
  • 代表連絡先:電話 025-523-4131
  • 研究所名:中央農業総合研究センター・水田利用研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

北陸地域においては、しわ粒の発生によるダイズ外観品質の低下が問題となっており、これが同地域のダイズの上位等級比率を他の地域に比べて大きく低迷させている主要因となっている。これまで、しわ粒は子実の外観品質の低下要因として重要視されてきた一方で、しわ粒の種子としての品質に着目した研究事例はあまり見あたらない。そこで、しわ粒の吸水特性、冠水処理時の障害の発生程度、種子活力を整粒と比較し、種子としての品質を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • しわ粒では、整粒に比べ、臍部からの吸水速度は高く、背面(臍部の対極)部及び側面(子葉背軸面)部からの吸水速度は低い。一方、種子を完全に水に浸漬した冠水条件下おいては、しわ粒と整粒の吸水速度は同等である(図1)。
  • 24時間の冠水処理を施した種子の出芽率は、しわ粒が整粒よりも低い。また、冠水処理したしわ粒から生じる実生は、整粒に比べ、子葉の損傷程度が大きく、子葉を除いた乾物重が小さい(表1)。以上のことから、しわ粒は整粒に比べて冠水処理による障害を受けやすい。
  • しわ粒では、含水率を約14%(湿重量ベース)に調節した調湿種子であっても、冠水処理により生じる障害の程度は整粒の水準にまでは軽減されない。
  • 実験室内での標準条件下の発芽試験(図2無処理区)においては、同一種子ロット由来のしわ粒と整粒の発芽率に明瞭な差は認められない。
  • 老化促進処理(相対湿度約100%、41°C、72時間)を施した種子の発芽率は、しわ粒が整粒よりも低い(図2老化促進処理区)ことから、同一種子ロットの整粒と比較したしわ粒の相対的な種子活力は低い。

成果の活用面・留意点

  • 本試験では亀甲じわ粒については検討を行っていない。
  • 本試験は品種「エンレイ」を供試して実施したものである。
  • ダイズ種子の冠水抵抗性についての品種比較試験では、しわ粒の混入率が影響する可能性を考慮する必要がある。
  • しわ粒と整粒の圃場条件下での出芽・苗立ちにおける差異については、さらに検討を要する。

具体的データ

図1~2,表1

その他

  • 中課題名:多雪重粘土地帯における播種技術及び栽培管理技術の高度化による水田輪作システムの確立
  • 中課題整理番号:111b2
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2010~2013年度
  • 研究担当者:中山則和、大野智史、細野達夫、関正裕
  • 発表論文等:中山ら(2014)日作紀、83(3):232-241