イタリア料理リゾットに向き、栽培しやすい水稲新品種「和みリゾット」

要約

「和みリゾット」は寒冷地南部では早生で、耐倒伏性が"やや強"のイネ品種である。大粒系統でリゾットに向き、イタリア料理店などでの利用が期待されている。

  • キーワード:イネ、リゾット、大粒、耐倒伏性、和みリゾット
  • 担当:作物開発・利用・水稲品種開発・利用
  • 代表連絡先:電話 025-523-4131
  • 研究所名:中央農業総合研究センター・作物開発研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

イタリアの米料理であるリゾットには大粒で煮崩れしにくい米が適する。イタリア原産の大粒種である「CARNAROLI」は、リゾットに最適であるとされるが、稈が長く倒伏しやすく、収量も他の品種より少ないのに加え、脱粒性、穂発芽性などに問題がある。一方、「コシヒカリ」などの国産米は「CARNAROLI」等のイタリア米と比較して粒が小さく、リゾットに調理した際の外観や食感が異なることが問題となっている。現在、日本国内のイタリア料理店では、「CARNAROLI」等のイタリア産米が高価であることや、食の安全・安心、地産地消への関心の高まりなどから、リゾットに適する国産の大粒米への期待が大きくなっている。この要望に応えるため、国内初のリゾット用品種として「和みリゾット」を育成した。

成果の内容・特徴

  • 「和みリゾット」はリゾットへの調理適性があり、収量性および耐倒伏性に優れた品種の育成を目標として、「北陸204号」と「CARNAROLI」(イタリア原産)の交配後代から育成された品種である。
  • 「ひとめぼれ」と比べて、出穂期は1日程度早く、成熟期は3日程度早く、育成地では"早生の晩"に属する(表1)。
  • 稈長は「ひとめぼれ」と比べてやや短く、「CARNAROLI」より明らかに短い。穂数は「ひとめぼれ」と比べて明らかに少なく、「CARNAROLI」よりやや多い。耐倒伏性は"やや強"であり「ひとめぼれ」「CARNAROLI」に優る。ふ先色は"赤"である(表1、表2)。
  • 収量性は「ひとめぼれ」に劣り、「CARNAROLI」に優る。玄米千粒重は「CARNAROLI」並であり、「ひとめぼれ」より明らかに大きい(表1、表2)。
  • いもち病真性抵抗性遺伝子はPiaを持つと推定され、圃場抵抗性は葉いもちが"強"、穂いもちが"弱"である。障害型耐冷性は"中"、穂発芽性は"やや難"、脱粒性は"難"である(表1、表2)。
  • リゾットに調理した「和みリゾット」は「コシヒカリ」と比べて外観に優れ、歯ごたえがあり、粘りがなく、べたつかず、煮崩れしにくい。総合評価は「コシヒカリ」に優り「CARNAROLI」に近い(表3)。

成果の活用面・留意点

  • 「和みリゾット」の栽培適地は東北中南部以南である。新潟県柏崎市において国産リゾット用米として生産が予定されている。普及見込み面積は約10haである。
  • 穂数が少なく収量性が低いため、疎植栽培は避ける。
  • 極大粒のため胴割れの発生に注意し、適期収穫に努め、収穫後は急激な乾燥は避ける。

具体的データ

表1~3

その他

  • 中課題名:米粉等加工用・業務用水稲品種の育成及び米の未利用成分利用技術の開発
  • 中課題整理番号:112a0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2006~2013年度
  • 研究担当者:松下景、山口誠之、笹原英樹、長岡一朗、三浦清之、重宗明子、後藤明俊