地域農業の将来動向から担い手に期待される経営規模

要約

2010年から2020年にかけて都府県の農業就業人口は36%、販売農家数は34%減少すると予測される。2010年の耕作放棄田及び今後、離農の予測される経営の水田を管理するために、2020年の水田作の担い手経営に期待される水田平均面積は67haと推計される。

  • キーワード:農林業センサス、農家、農業就業人口、担い手、農地
  • 担当:経営管理システム・開発技術評価
  • 代表連絡先:電話 029-838-8481
  • 研究所名:中央農業総合研究センター・農業経営研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

日本農業は農業就業人口の3分の2が65歳以上の高齢者であり、今後その激減と販売農家の一層の減少が懸念される。地域農業を維持し食料の安定供給を図るために、担い手への農地集積と大規模営農モデルの構築、及びその実現に必要な技術開発課題の検討は喫緊の課題である。そこで、農林業センサスを用いた動向予測を基に、担い手に期待される経営規模を推計する。

成果の内容・特徴

  • 都府県の農業就業人口をコーホート法で予測した結果、2010年から2020年までの10年間で36%(約90万人)減少し、内65 歳未満の人口は43%(約40万人)減少すると予測される(図1)。
  • 都府県の農家数をマルコフモデルで推移予測した結果、2010年からの10年間で160万戸から105万戸に減少すると予測される(図2)。この間に離農する経営の農地面積は、51万ha(田37万ha、畑・樹園地14万ha)であり、2010年の農地面積の20%にあたる。
  • 今後の地域水田農業を中心的に担う経営を、稲作の販売金額1位の法人組織経営体と経営耕地面積10ha 以上の販売農家と仮定すると、都府県全体で約14千経営体になると予測される。これらの水田作の担い手経営が、2010年の耕作放棄田5万ha 及び2020 年までに離農の予測される経営の田37万ha も含めて管理するために期待される経営規模(田の面積)は、都府県平均で67ha と推計される(図3)。
  • 担い手に期待される経営規模を農業地域別に見ると、10ha以上の販売農家を中心に担い手経営の比較的多い東北、関東、北陸では50ha 前後であるが、担い手経営の少ない東海、近畿では70ha、中国では92ha と推計される(表1)。

成果の活用面・留意点

  • 各地域の担い手経営のビジョン策定等に活用できる。
  • 九州地域については、特に福岡県、佐賀県における集落営農の影響で、2010年の統計数値が実態から外れた数値となっており、結果として2020年の予測値にも重大な影響が生じたため「担い手に期待される経営規模」予測から除外した。また、東京都、神奈川県、四国など土地利用型農業の展開が見られない地域等も除外した。
  • 集計は農林水産省「農林業センサス」の調査票情報を独自集計したものである(申請の公文書番号- 25 中セ第13052301号)。

具体的データ

図1~2,表1

その他

  • 中課題名:新技術の経営的評価と技術開発の方向及び課題の提示
  • 中課題整理番号:114a0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2011~2013年度
  • 研究担当者:安武正史、千田雅之
  • 発表論文等:安武ら(2013)農業経営研究、51(3):103-108