専業農家における有配偶率の低下と子供の数への影響

要約

専業農家における農業経営者、同居農業後継者の有配偶率は、2005年以降低下している。専業農家や主業農家の1戸当たりの15歳未満人口は、販売農家全体よりも少なくなっており、農業後継者、及び配偶者確保に向けた対策が必要になっている。

  • キーワード:農林業センサス、家族経営、専業農家、有配偶率、農業後継者
  • 担当:経営管理システム・経営管理技術
  • 代表連絡先:電話 029-838-8481
  • 研究所名:中央農業総合研究センター・農業経営研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

農業生産の主要な担い手とされる専業的な家族経営において、農業生産を継続していくためには、農業後継者の確保が重要となる。その一方で、専業的な経営では、家族世帯員数の減少が続いており、次世代を再生産するためにも、農業後継者だけではなく、配偶者の状況を含めた分析が求められる。農林業センサスでは、年齢階層別に配偶者がいる農業経営者数、及び同居農業後継者数を把握しており、年齢階層別に配偶者がいる割合(以下、「有配偶率」とする)を示すことが可能である。そのため、これらの数字から、専兼業農家別に農業経営者、同居農業後継者における配偶者の状況、及び子供の数への影響を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 専兼業農家別に同居農業後継者の有配偶率をみると(図1)、専業農家において割合が低く、2005年から2010年にかけて低下している。同居農業後継者年齢が「45~49歳」(2010年時点)の場合、有配偶率は第2種兼業農家が72%に対して、専業農家では35%、主業農家では51%にとどまる。特に第2種兼業農家の場合は、加齢につれて有配偶率が上昇するが、専業農家の場合は上昇せず、全ての年齢階層で40%以下になっている。
  • 専兼業農家別に農業経営者の有配偶率をみると、「50~54歳」時点では、第2種兼業農家で85%に対して、専業農家では64%と大きく下回り、2005年よりも減少している(図2)。特に、専業農家における農業経営者の有配偶率をみると、「40~44歳」時点において68%にまで上昇するが、40歳代後半から減少に転じ、「50~54歳」を谷として再び増加する曲線になる。このような推移は、高齢の農業経営者から世代交代する際に、配偶者がいない後継者が農業経営者になるために、「50~54歳」にかけて有配偶率が低下するとみられる。
  • 専兼業農家別に1戸当たりの15歳未満人口をみると、販売農家全体で0.74人に対して専業農家では0.50人、主業農家では0.57人と低く、農業の比重が高い専業農家、主業農家においてより少なくなっている(図3)。専業農家の「50~54歳」時点の農業経営者の有配偶率と1戸当たりの15歳未満人口を地域別にみると、強い相関があり(図4)、有配偶率の低さが、子供の数の少なさにつながっている。

成果の活用面・留意点

  • 専業的な経営における配偶者の状況を示したものはなく、次世代の農業後継者、配偶者の確保対策に向けた行政の基礎的な情報として活用できる。

具体的データ

図1~4

その他

  • 中課題名:新規参入経営支援のための経営管理技術の開発
  • 中課題整理番号:114c0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2011~2013年度
  • 研究担当者:澤田守
  • 発表論文等:
    澤田(2013)農業経営研究、51(2):114-119
    澤田(2013)農業経営通信、256:2-3