晩植したWCS用飼料イネ品種におけるイチモンジセセリ幼虫の発生と被害

要約

晩植した飼料イネ品種におけるイチモンジセセリ幼虫の発生は、8月中旬には「たちはやて」や「ホシアオバ」で多くなるが、乾物重の有意な差は認められない。

  • キーワード:飼料イネ、二毛作、イチモンジセセリ(イネツトムシ)
  • 担当:自給飼料生産利用・耕畜連携飼料生産
  • 代表連絡先:電話 029-838-8481
  • 研究所名:中央農業総合研究センター・病害虫研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

イチモンジセセリParnara guttata guttataの幼虫(通称イネツトムシ)は葉をつづりあわせた巣(ツト)を作りイネの葉を摂食する。WCS(稲発酵粗飼料)用飼料イネを、ムギ等と二毛作するなどのため晩植栽培した場合、主に7月後半から8月にかけて発生する第2世代幼虫による茎葉への食害が懸念される。そこで、本種の発生の多い品種と被害を解明するための参考として、晩植栽培した飼料イネ5品種における第2世代幼虫の発生を調査した。

成果の内容・特徴

  • 飼料イネ5品種「夢あおば」「たちはやて」「ホシアオバ」「モミロマン」「タチアオバ」で確認したツト数および幼虫・蛹数は、7月下旬には品種間で差は見られないが、老齢幼虫と蛹が主体となる8月中旬には、確認されたツト数および幼虫・蛹数は「たちはやて」で最も多く、次に「ホシアオバ」で多くなる(図1)。
  • 「たちはやて」と「ホシアオバ」について、防除区と無防除区を設けて幼虫数と飼料イネの黄熟期乾物重を調査すると、防除により8月の幼虫密度は有意に低下する(表1)が、無防除区での最大幼虫密度0.758頭/株の範囲内(表1)では、無防除であっても両品種とも乾物重に有意な差は認められない(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 2011年の試験ではイチモンジセセリ幼虫の発生が飼料イネ品種間によって有意に異なるが、単年度の結果であるので基礎情報とする。
  • この試験における幼虫密度では飼料イネの収量への影響は小さいと考えられる。しかしこれ以上の発生密度の場合、収量への影響については不明である。
  • 防除適期である7月下旬に確認できた幼虫数が少なくても、品種によってはその後の発生に注意する必要がある。
  • 「たちはやて」は2013年に品種登録された新品種で、旧系統名は「関東飼糯254号」である。

具体的データ

図1~3

その他

  • 中課題名:耕畜連携による水田の周年飼料生産利用体系の開発
  • 中課題整理番号:120c3
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2011~2012年度
  • 研究担当者:石崎摩美、石川哲也
  • 発表論文等:石崎、石川(2013)関東病虫研報、60:95-98