スギナの繁殖器官である塊茎と根茎の形成はアンモニア態窒素により阻害される

要約

スギナの栄養繁殖器官である塊茎と根茎の形成は、硝酸態窒素では400mgL-1の高濃度でも抑制されないのに対し、アンモニア態窒素では60 mgL-1の低濃度でも強く抑制され、施用窒素の形態によりその効果が異なる。

  • キーワード:スギナ、塊茎、根茎、アンモニア態窒素、形成阻害
  • 担当:環境保全型防除・生態的雑草管理
  • 代表連絡先:電話 029-838-8481
  • 研究所名:中央農業総合研究センター・生産体系研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

強害多年生雑草トクサ科スギナの繁殖、まん延の原因は地下部栄養繁殖器官である根茎と塊茎が生育期間の長期にわたり大量に形成されるためであり、これらの器官形成制御要因の解明が本種の防除技術開発に有用である。しかし、これら器官の形成に関して、他の植物で知られる日長条件や植物ホルモン等の要因の関与が本種では認められない。組織培養系を用いた生物検定法では、栄養繁殖器官の形成が培地中の高窒素濃度により阻害されるが、培地中の窒素形態の影響は不明である。より適確な本種の器官形成制御要因を解明するため、培地中の窒素の形態が各器官の形成に及ぼす影響を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 検定用培地に無菌培養したスギナの根茎1節を埋め込む(図1)と、硝酸態窒素を含む培地では新たな地上部栄養茎が培地中の窒素濃度に関係なく形成され、392mgL-1の高濃度でも形成が認められる。一方、アンモニア態窒素を含む培地中では、同様に高濃度でも地上部栄養茎の形成が認められるが、56mgL-1以上で形成数が減少する(図2)。
  • スギナの根茎は培地中の硝酸態窒素濃度392mgL-1でも形成が認められるが、アンモニア態窒素では28mgL-1以上では形成が認められず、強い形成抑制効果がある(図3)。
  • スギナの塊茎量は培地中の硝酸態窒素濃度56mgL-1で最多となり、392mgL-1の高濃度でも形成するが、アンモニア態窒素では56mgL-1以上では形成せず、強い形成抑制効果が認められる(図4)。

成果の活用面・留意点

  • 環境要因が不明であったスギナの器官形成メカニズム解明につながるとともに、生理代謝制御を活用した新たな防除技術開発ための技術シーズとなる。
  • 本成果は組織培養系を用いた生物検定法により得られたものである。

具体的データ

図1~4

その他

  • 中課題名:生物情報に基づく帰化雑草の侵入・まん延警戒システムと長期的雑草管理法の構築
  • 中課題整理番号:152d0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2001~2013年度
  • 研究担当者:中谷敬子、藤井義晴(東京農工大学)
  • 発表論文等:1) Nakatani K. & Fujii Y. (2013) Weed Biol. Manag. 13 (4):151–155