イネ稲こうじ病の最適防除日の決定を支援する薬剤散布適期判定システム

要約

薬剤散布適期判定システムは、利用者が診断に必要な情報を登録するとイネ稲こうじ病の発生予測モデルから薬剤の散布適期を予測し、散布適期開始日を含む薬剤散布に必要な情報を電子メールで配信するウェブプログラムである。

  • キーワード:イネ稲こうじ病、システム、アメダス、出穂期、薬剤防除、散布適期
  • 担当:新世代水田輪作・重粘地水田輪作
  • 代表連絡先:電話 025-523-4131
  • 研究所名:中央農業総合研究センター・水田利用研究領域
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

イネ稲こうじ病に対する薬剤の防除効果が高い期間は限られるため、農家が独自に適期を判断することが難しく、そのため本病により規格外米やサイレージ・種籾への病粒混入が発生し問題となっている。また、普及センターやJAでは農家への実効性のある薬剤散布日の決定手段がなく対応に苦慮している。そこで、農家による薬剤散布日の決定をサポートする薬剤散布適期判定システムを開発する。

成果の内容・特徴

  • イネ稲こうじ病菌は葉鞘内の穂の穎花に感染することから出穂期15日前後が薬剤散布に適していることに基づき、本システムは薬剤の散布適期を自動判定する(図1)。
  • 登録利用者は、Web上で本システムにアクセスし、アメダス地点、移植日、品種、薬剤の種類と散布期間を選択し、平年の出穂期までの積算気温等を入力して登録する。利用者は、予測された薬剤散布情報の「薬剤の散布適期開始メール」を受信できる(図2)。
  • 本システムは、全国のアメダス地点を登録しているため全国で利用できる。1990年から現在までのアメダスデータも格納している。
  • 本菌の土壌菌量を登録すると、株あたり病粒数の予測値をWeb上で確認できる(図3)。任意に登録した閾値(株あたり病粒数)を超えた場合は閾値超過メールを受信できる。格納アメダスデータを用いての過去の被害要因解析も可能である。

普及のための参考情報

  • 普及対象:JA、普及センター、採種農家、一般農家、公設試験研究機関、防除所
  • 普及予定地域:JA、各県農林事務所等を含む全国10地点以上
  • その他:

    1)本システムと防除日決定までの手順の詳細は、「イネ稲こうじ病の薬剤防除マニュアル」に記載。

    2)土壌菌量の測定法は、本マニュアルとAshizawa (2010)を参考にされたい。
    3)本システムは、熊本JA、茨城県北農林事務所等(システム登録者41名)で実証・利用されている。

具体的データ

図1~3

その他

  • 中課題名:多雪重粘土地帯における播種技術及び栽培管理技術の高度化による水田輪作システムの確立
  • 中課題整理番号:111b2
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2011~2014年度
  • 研究担当者:芦澤武人
  • 発表論文等:
    1)芦澤(2014)関東東山病虫研報、61:18-22
    2) Ashizawa et al. (2011) J. Gen. Plant Pathol. 77:10-16
    3) 芦澤(2013)農薬春秋、90:10-16
    4)農研機構(2015)「イネ稲こうじ病の薬剤防除マニュアル」 http://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/publication/laboratory/narc/manual/058289.html (2015年5月28日)