狭畦不耕起栽培はダイズ白絹病の発生量を減少させる

要約

播種から収穫まで耕起しない狭畦不耕起栽培は、慣行の耕起播種・中耕培土栽培と比較して、ダイズ白絹病の発生を減少させる。狭畦不耕起栽培による白絹病の抑制は中耕培土前の段階でも認められる。

  • キーワード:ダイズ、白絹病、狭畦不耕起栽培、中耕培土
  • 担当:新世代水田輪作・大豆安定多収栽培
  • 代表連絡先:電話029-838-8481
  • 研究所名:中央農業総合研究センター・病害虫研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

大豆立枯性病害の一つである白絹病は大豆栽培の重要な阻害要因である。本病に対する抵抗性品種は見つかっていない。白絹病に対する登録薬剤であるクロルピクリンくん蒸剤、トリクロホスメチル水和剤、フルトラニル水和剤は、くん蒸、土壌灌注、株元散布を必要とするため、大面積の大豆栽培には適用しにくい。このため、大面積栽培にも適用できる耕種的防除法を開発する必要がある。
今までに中耕培土の実施や麦稈などの粗大有機物が白絹病の多発に関与することが知られている。一方、近年の経営規模拡大に適する狭畦不耕起栽培では、播種時の耕起だけでなく中耕培土を実施しないため土壌のかく乱が少なく、白絹病の発生状況を変化させると考えられる。そこで、麦跡大豆栽培体系における狭畦不耕起栽培と白絹病の発生の関係を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 白絹病の発生量は、播種時に耕起し広畦播種とし、その後中耕培土する処理区より、一貫して土壌を耕さない狭畦不耕起で減少する。播種時のみ耕して中耕培土を省略する狭畦耕起栽培では、その中間的な発生量である(図1)。この現象は、地下水位制御の有無に関係しない。
  • 中耕培土を行う前の白絹病の発生量は、播種時に耕起を行わない狭畦不耕起播種で少なく、耕起播種で多くなる(表1)。耕起播種では、広畦播種の方が狭畦播種より発生が多くなる傾向がある(表1、図2)。
  • 白絹病菌の生存・増殖場所となる麦稈が残置される不耕起圃場において、発病の低減がみられることから、狭畦不耕起栽培は、本病軽減も兼ね備えた省力栽培体系である。

成果の活用面・留意点

  • 本試験は、茨城県つくば市にある黒泥土の水田転換畑で品種タチナガハを用いて行ったもので、前作で小麦を栽培し、不耕起栽培区の麦稈は圃場に残置した。
  • 地下水位制御有区はFOEASにより地下30cmになるように制御した。
  • 本試験で用いた不耕起播種機は松山株式会社製NSV600である。
  • 白絹病の少発生条件下で得られた成果であり、中発生や多発生圃場における狭畦不耕起栽培の有効性は確認が必要である。
  • 広畦不耕起栽培で培土を行うと白絹病が多発した事例があることから、白絹病の発生を抑制するには中耕培土を省略する。

具体的データ

図1~2,表1

その他

  • 中課題名:根粒機能等を活用した大豆安定多収栽培法の開発
  • 中課題整理番号:111a2
  • 予算区分:交付金、委託プロ(水田底力)
  • 研究期間:2009~2014年度
  • 研究担当者:越智 直、加藤雅康(JIRCAS)、田澤純子、前川富也、濱口秀生、島田信二
  • 発表論文等:加藤雅康ら(2014)関東東山病害虫研究会報、61:26-30