製麺適性に優れる早生の高アミロース米水稲品種「あみちゃんまい」

要約

「あみちゃんまい」は、寒冷地南部では早生で、耐倒伏性が"やや強"のイネ品種である。米のアミロース含有率が30%程度と高く、麺への加工適性が高い。中生の主食用品種「コシヒカリ」との作期分散が可能である。

  • キーワード:イネ、高アミロース、米粉、米麺、ライスヌードル
  • 担当:作物開発・利用・水稲品種開発・利用
  • 代表連絡先:電話 025-523-4131
  • 研究所名:中央農業総合研究センター・作物開発研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

現在、日本で作付けされる品種の大部分は、米のアミロース含有率が20%前後の中アミロース米品種である。中アミロース米で作成した麺は、ゆで麺の表面の粘りが強く、麺離れが悪いことが欠点とされている。一方、高アミロース米品種である「越のかおり」は麺離れが良いため製麺適性が高く、米粉と食塩のみで作られた製品が市販されている。「越のかおり」は中生品種であり、主食用の主力品種「コシヒカリ」と収穫時期が重なるため、熟期の異なる高アミロース米品種が求められている。この要望に応えるため、早生で日本型の高アミロース米品種「あみちゃんまい」を育成した。

成果の内容・特徴

  • 「あみちゃんまい」は、早生の高アミロース米品種の育成を目的として、晩生の高アミロース米系統「新潟79号(後の「こしのめんじまん」)」と早生の日本型系統「北陸191号」の交配後代から育成された品種である。
  • 出穂期、成熟期は「ひとめぼれ」より3日ほど早く、"早生の晩"に属する。「コシヒカリ」より成熟期が9日ほど早いため、作期分散が可能である。稈長は「コシヒカリ」より10cm以上短く、耐倒伏性は「越のかおり」並の"やや強"である。収量性は、標肥区では「ひとめぼれ」と同等であるが、多肥区では「ひとめぼれ」より明らかに多収である(表1)。
  • 玄米千粒重は「ひとめぼれ」よりやや軽い"中"で、粒形は長円形である(表1)。「コシヒカリ」等と同様の粒形であるため、選別、精米など従来の日本型品種に対応した調整方法が適用できる。精米のアミロース含有率は、「ひとめぼれ」、「コシヒカリ」より11~12ポイント程度高い約30%で、「越のかおり」より3ポイントほど低い(表1)。
  • 押し出し製麺機を用いて、米と水のみで米麺の製造が可能である(表2)。製造した麺は、ゆで時間により様々な調理が可能である(表3)。
  • いもち病真性抵抗性遺伝子はPiaを持つと推定され、圃場抵抗性は、葉いもち、穂いもちとも"中"である。穂発芽性は "中"、穂孕期の障害型耐冷性は"弱"である(表1)。

成果の活用面・留意点

  • 出穂特性からみた栽培適地は東北中南部、北陸および関東以西である。島根県雲南市等で米麺の製品化が進められており、今後、島根、富山、福島で合わせて数haの実用栽培が見込まれている。
  • 葉いもち圃場抵抗性は"中"なので、適宜防除を行う。
  • 穂発芽性が"中"であるため、適期刈り取りに努める。
  • 障害型耐冷性が"弱"であるため、冷害の危険がある地域での栽培は避ける。

具体的データ

表1~3

その他

  • 中課題名:米粉等加工用・業務用水稲品種の育成及び米の未利用成分利用技術の開発
  • 中課題整理番号:112a0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2003~2014年度
  • 研究担当者:笹原英樹、前田英郎、松下景、長岡一朗、山口誠之、三浦清之、重宗明子、後藤明俊