焼酎醸造特性が優れる寒冷積雪地向け六条皮麦新品種「ゆきみ六条」
要約
寒冷積雪地向け六条皮麦新品種「ゆきみ六条」は軟質でデンプン価が優れ、その焼酎は香りが強く、味、官能総合評価が優れる。新潟県内での「地産地消型」麦焼酎原料としての契約栽培が予定されている。
- キーワード:大麦、焼酎醸造特性、寒冷積雪地、地産地消向け
- 担当:作物開発・利用・大麦品種開発・利用
- 代表連絡先:電話 025-523-4131
- 研究所名:中央農業総合研究センター・作物開発研究領域
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
土地利用型作物として有用な小粒大麦(六条皮麦)は需給バランスの緩みによって、減産や流通価格低下を余儀なくされた歴史があり、新規需要開発は生産サイドにとっても重要な課題である。大麦の用途別国内自給率では焼酎醸造用が特に低い(17%)が、六条皮麦を利用する動きはほとんどなかった。一方、各地で地域活性化、農業振興を目的として地域産大麦を利用した新たな商品開発を求める動きがあり、新潟県内では酒造メーカーや大学が連携して、地域適応性のある特徴的な大麦新品種や新たな焼酎醸造技術を組み合わせて、従来にないタイプの麦焼酎の開発・販売を目指している。そこで、焼酎醸造特性が優れ、栽培性も優れる六条皮麦「ゆきみ六条」を「地産地消型」焼酎用六条大麦として限定普及をすすめる。
成果の内容・特徴
- 「ゆきみ六条」は東北皮37号/東山皮101号(後のシルキースノウ)F1を種子親として、横綱/Carre26のF1を花粉親として2002年に交配され、育成された系統である。
- 「ゆきみ六条」は他の六条大麦品種に比べて、軟質であるために吸水が早く、アルコールの素になるデンプン価も高い特徴がある(表1)。
- 「ゆきみ六条」を用いた焼酎は官能評価において香りが強く、味、総合評価とも優れ、個性的な「地産地消型」焼酎としての差別性に優れている(表1)。
- 「ゆきみ六条」のもろみの純アルコール収得量は他品種と同等あるいはやや多いが、日本酒度は低めでエキス分が潜在的に多い特徴をもつ(表1)。
- 「ゆきみ六条」はミノリムギに比べて出穂が早く、穂数が多い特徴をもつ(表2、図1)。収量性は優れるが、やや千粒重が小さく小粒である。雲形病抵抗性を有し、耐穂発芽性も優れる(データ略)。
- 「ゆきみ六条」はミノリムギに比べて硝子率が低めの軟質品種で、精麦白度が高く、麦ご飯にしても色が明るい特徴がある(表2)。
- 「ゆきみ六条」は新潟県内での新たな焼酎醸造技術と組み合わせた「地産地消型麦焼酎」への利用が予定されている(図2)。
成果の活用面・留意点
- 新潟県内での酒造メーカーと農業法人の契約栽培が予定されている。
- 「ゆきみ六条」はオオムギ縞萎縮病に弱い。茎立ち期に黄化、萎縮症状が現れた場合にはウイルス感染の有無を確認する。
具体的データ
![図1~2,表1~2](../../../files/narc14_s13_1.png)
その他
- 中課題名:需要拡大に向けた用途別高品質・安定多収大麦品種の育成
- 中課題整理番号:112e0
- 予算区分:交付金、競争的資金(農食事業)
- 研究期間:2002~2014年度
- 研究担当者:長嶺敬、関昌子、伊藤誠治、山口修、青木恵美子、馬場孝秀
- 発表論文等:品種登録出願 第29879号