非病原性細菌試作液剤は各種キサントモナス属病害に防除効果を持つ

要約

非病原性細菌11-100-01株試作液剤を1E+08cfu/mLの濃度に希釈して散布することで、モモせん孔細菌病、カンキツかいよう病、ブロッコリー黒腐病に対して、既存の無機銅水和剤や化学農薬と同等の防除効果を示す。

  • キーワード:微生物農薬、モモせん孔細菌病、カンキツかいよう病、ブロッコリー黒腐病
  • 担当:環境保全型防除・生物的病害防除
  • 代表連絡先:電話 029-838-8481
  • 研究所名:中央農業総合研究センター・病害虫研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

環境保全と食の安全・安心に対する関心が高まる中、微生物農薬の開発が盛んに行われており、細菌病害に関しても銅剤や抗生物質剤に代わる新たな薬剤の開発が望まれている。キサントモナス属細菌は100種類以上の植物に感染し、多くの主要作物で甚大な経済的被害を引き起こしている。そこで、キサントモナス属細菌による病害に対して広く防除効果を持つ微生物農薬を開発する。

成果の内容・特徴

  • 非病原性キサントモナス属細菌11-100-01株は病原細菌より先に植物の傷等に定着することにより、病原細菌が定着・増殖するのを抑制する(図1)。
  • 11-100-01株の、培養時の培地組成の最適化およびAB塩溶液を用いた製剤化により保存安定性を向上させ、濃度を1E+10cfu/mLとした試作液剤(図2)を、100~200倍に希釈して植物体に噴霧することで、モモせん孔細菌病、カンキツかいよう病、ブロッコリー黒腐病の発病を抑制する(図3)。防除価は60程度で、既存の無機銅剤、化学農薬及び微生物農薬と同等である。
  • 無機銅剤では高温期に薬害を生じやすいが、本試作液剤では薬害を生じない。
  • 本試作液剤を用いた防除試験後の土壌微生物相は、無処理と比べて大きな変化は認められない。

成果の活用面・留意点

  • 本試作液剤は農薬登録されておらず、一般圃場で使用することはできない。
  • 試作液剤の保存安定性は、製品にするには不十分であり、改良が必要である。

具体的データ

図1~3

その他

  • 中課題名:生物機能等を活用した病害防除技術の開発とその体系化
  • 中課題整理番号:152a0
  • 予算区分:競争的資金(農食事業)
  • 研究期間:2011~2013年度
  • 研究担当者:井上康宏、川口章(岡山県農林水産総合センター農業研究所)、石井香奈子(静岡県農林技術研究所果樹研究センター)、永井裕史(愛知県農業総合試験場)、前川大輔(クミアイ化学工業株式会社)
  • 発表論文等:
    1)井上ら(2014)植物防疫、68:376-378
    2)川口(2014)植物防疫、68:379-382
    3)石井ら(2014)関西病虫研報、56:49-54
    4)永井ら(2014)関西病虫研報、56:55-59
    5)井上ら「非病原性キサントモナス属細菌株及び該菌株を用いた植物病害防除剤」特願2012-59746(2012年3月16日)