イネのいもち病量的抵抗性遺伝子は、組み合わせにより集積効果が異なる

要約

イネのいもち病量的抵抗性遺伝子、pi21Pi34Pi35では、遺伝子の種類によって抑制する葉いもちの感染過程や抑制程度が異なる。また、2個の遺伝子の集積効果は、組み合わせにより異なる。

  • キーワード:イネ、いもち病、量的抵抗性遺伝子、集積効果
  • 担当:環境保全型防除・水稲病害抵抗性
  • 代表連絡先:電話 029-838-8481
  • 研究所名:中央農業総合研究センター・病害虫研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

いもち病に対する量的抵抗性遺伝子を持つイネ品種は、いもち病菌の侵入は許すものの病斑の伸長や胞子形成を抑制することにより、結果として圃場での病気の蔓延速度を抑制するなど、比較的効果の弱い抵抗性を示す。量的抵抗性遺伝子を単独で利用すると、冷害年など環境条件によっては発病が増加するため、複数の遺伝子を集積する事が望まれるが、集積効果の詳細な研究事例は少ない。本研究では、遺伝解析の進んでいる3個の抵抗性遺伝子pi21Pi34Pi35に着目し、遺伝子を単独あるいは2個ずつ保有する「コシヒカリ」の戻し交雑系統を用いて、葉いもち病感染の各段階における発病抑制効果ならびに遺伝子の集積効果を検討する。

成果の内容・特徴

  • pi21は病斑数と横方向への病斑拡大を強く抑制し、Pi34は感染初期の菌糸伸展を強く抑制して、病斑数をやや抑制する(図1、図2、図3)。また、Pi35は、侵入率以外の全過程を強く抑制する(図1、図2、図3)。このように、抵抗性遺伝子の種類により、抑制するいもち病の感染過程や抑制程度が異なる。
  • いずれの抵抗性遺伝子も、いもち病菌の侵入率には影響しない。
  • 2個の遺伝子を集積した場合、Pi34Pi35を集積した時の感染初期の菌糸伸展抑制は、Pi34またはPi35単独の場合よりも大きい(図1)。また、pi21Pi34またはPi35と集積した時の病斑数や病斑面積抑制も、それぞれの遺伝子単独の場合よりも大きく、集積効果が現れる(図2、図4)。これに対して、Pi34Pi35を集積した時の病斑数および病斑面積抑制は、いずれもPi35単独と同等であり、集積効果は現れない(図2、図4)。このように、遺伝子の組み合わせにより、集積効果が現れる場合と、現れない場合がある。

成果の活用面・留意点

  • 本試験は、ガラス室内で生育させたイネにいもち病菌を接種することにより行った。
  • いもち病量的抵抗性遺伝子を集積した品種育成のための情報となる。

具体的データ

図1~4

その他

  • 中課題名:水稲の病害抵抗性の持続的利用技術の開発
  • 中課題整理番号:152c0
  • 予算区分:交付金、委託プロ(新農業展開RGB)
  • 研究期間:2008~2014年度
  • 研究担当者:安田伸子、光永貴之、林敬子、小泉信三、藤田佳克、鈴木文彦、早野由里子、芦澤武人、石原岳明、松本直
  • 発表論文等:Yasuda N. et al. (2015) Plant Dis. 99: 904-909