紫外線除去フィルムのトンネル被覆によるレタス菌核病の発生抑制

要約

春どり作型玉レタスのトンネル栽培では、紫外線除去機能を有するフィルムを被覆に用いることで、菌核病の発生を軽減することができる。紫外線除去による玉レタスの生育や品質の低下はほとんどない。

  • キーワード:玉レタス、紫外線除去フィルム、菌核病
  • 担当:環境保全型農業システム・有機農業体系
  • 代表連絡先:電話 029-838-8481
  • 研究所名:中央農業総合研究センター・病害虫研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

3~4月に収穫期となる春どり作型の玉レタス栽培では、本圃での生育期間が低温条件となるため、フィルム等を被覆するトンネル栽培が行われている。この作型では、結球肥大期に菌核病(病原菌:Sclerotinia sclerotiorum)が多発することがあり、収量低下の一因となっている。そこで、有機栽培に対応した本病の物理的防除法を開発するため、紫外線除去機能を有するポリオレフィン系フィルム(POフィルム)を用いたトンネル被覆栽培による本病の発生抑制効果を明らかにするとともに、紫外線除去が玉レタスの生育と品質に及ぼす影響を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 0.075mm厚に統一した、POフィルムを被覆したトンネル内(PO区)と紫外線除去POフィルムを被覆したトンネル内(PO-UVC区)の平均気温は、それぞれ約9.8oC、約9.3oCと大きな差は認められない(図1)。また、PO-UVC区の紫外線量(260-400nm)はPO区の約3%と低い。
  • 1月下旬~2月上旬に定植し、3月中旬から裾換気を行うトンネル被覆栽培では、年次間差があるものの3月中下旬に菌核病の初発が確認され、収穫適期に近づくにしたがって発病株率が増加するが、塩化ビニルフィルムを被覆した農ビ区やPO区に比べてPO-UVC区では菌核病の発生率が低く推移し、一定の防除効果がある(図2、図3)。
  • 収穫時のレタスは、球径がPO-UVC区でPO区よりやや大きくなるが、結球重、球高、結球緊度および結球に含まれる可溶性糖、硝酸イオン、アスコルビン酸の各含量は両区で有意な差はなく、紫外線除去フィルムを被覆して栽培しても玉レタスの生育や品質の低下はほとんどない(表1)。

成果の活用面・留意点

  • 本成果を利用することで、春どり作型の玉レタス有機栽培における菌核病発生抑制および慣行栽培における化学合成農薬の削減が期待できる。
  • 玉レタス(品種「ステディ」)を供試して研究所内圃場で実施した結果であり、栽培時期やトンネル被覆の換気方法、フィルムの使用期間の違いによって、菌核病の発生量や軽減効果は異なる可能性がある。
  • ナス等では紫外線除去によるアントシアニン含量の低下が知られていることから、アントシアニンを含む着色系リーフレタスの栽培では、紫外線除去フィルムのトンネル被覆により葉の着色が損なわれる可能性がある。

具体的データ

図1~2,表1

その他

  • 中課題名:有機農業の成立条件の科学的解明と栽培技術の体系化
  • 中課題整理番号:153b0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2010~2014年度
  • 研究担当者:山内智史、佐藤文生、白川隆
  • 発表論文等:山内ら(2012)関東病虫研報、59:23-25