晩播によるダイズ黒根腐病の発生抑制

要約

ダイズ黒根腐病発生圃場において、播種時期を標準より2~3週間程度遅らせることで黒根腐病の発病を3割程度抑制でき、収量については同等かもしくは若干増加する。

  • キーワード:ダイズ、黒根腐病、晩播
  • 担当:新世代水田輪作・大豆安定多収
  • 代表連絡先:電話 029-838-8481
  • 研究所名:中央農業総合研究センター・病害虫研究領域
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

黒根腐病(図1)は、ダイズ栽培において重大な被害を生じる立枯性病害の一種であり、主に東北・北陸地域で問題となっている。現在のところ、黒根腐病に対する抵抗性品種はなく、本病害に卓効を示す防除法は開発されていない。また、黒根腐病に対する農薬が登録されているものの、栽培上のコストおよび本病がダイズの生育後期に顕在化する土壌病害であることを考慮すると、耕種的技術による本病の対策が期待される。そこで、技術投入の際の費用および労力の必要性がほとんどなく、現状のダイズ作に適用できる技術である晩播の黒根腐病抑制効果を明らかにする。

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成果の内容・特徴

  • 標準より2~3週間程度晩播することによって、黒根腐病の発病株率を標準播種と比較して3割程度低下させることが可能である(表1)。
  • 黒根腐病発病株についても、軽微な発病(発病指数1)にとどまる割合が標準播種と比較して多い(表1)。
  • 黒根腐病発生圃場では、2~3週間程度の晩播であれば収量は同等かもしくは若干増加する(表1)。
  • ダイズ根中の黒根腐病菌DNA量は、同じ生育時期(播種4週間後)で比較すると、晩播の方が標準播種より少ない(図2)。

普及のための参考情報

  • 普及対象:ダイズ黒根腐病発生地域の生産者および普及関係者
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:東北・北陸地域で5月下旬から6月上旬が標準播種期である水田転換畑ダイズ作地帯
  • その他:
    (1)黒根腐病の発病程度が高まれば収穫物のしわ粒率も高まるため、晩播により発病程度が低下することで収穫物の品質の低下を防ぐことができる。
    (2)播種時期が遅いほど黒根腐病抑制効果は高いが、晩播による減収リスクが考えられる場合は播種量を増やす必要がある。

具体的データ

図1~2,表1

その他

  • 中課題名:根粒機能等を活用した大豆安定多収栽培法の開発
  • 中課題整理番号:111a2
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2010~2015年度
  • 研究担当者:越智 直、齋藤 隆(福島農総セ)、二瓶直登(東京大)、遠藤あかり(福島農総セ)、穴澤 崇(会津農林)、荒井義光(福島農総セ)、青木由美(富山広域セ)
  • 発表論文等:越智ら(2013)北日本病害虫研究会報、64:46-51