レタスの安定的な契約取引を支援する作付計画策定・出荷予測アプリケーション
要約
レタスの契約取引を行う出荷団体を対象とした、生育シミュレーションに基づく出荷予測アプリケーションと契約取引支援マニュアルである。契約条件に応じた作付計画の策定、週別出荷数量の予測と取引先への情報提供により、安定的な契約取引を支援できる。
- キーワード:レタス、契約取引、生育モデル、メッシュ農業気象データ、シミュレーション
- 担当:業務需要畑野菜作・野菜周年安定生産、IT高度生産システム・農業情報統合利用
- 代表連絡先:電話 029-838-8481
- 研究所名:中央農業総合研究センター・情報利用研究領域
- 分類:普及成果情報
背景・ねらい
国内のレタス生産では、生産者や出荷団体と実需者の間で契約取引が増加している。露地栽培では気象条件が影響しやすいため収穫直前まで出荷時期・数量の正確な把握が困難であり、安定的な取引を進める上で課題となっている。そこで、レタスの出荷団体を対象として安定的な契約取引を支援するため、生育モデルとメッシュ農業気象データを用いた生育シミュレーションにより、作付計画の策定と週別出荷数量の予測を行うアプリケーションを開発する。さらに、それを契約取引に利用する手順をマニュアル化する。
成果の内容・特徴
- レタスの契約取引を行っているJAや農業生産法人などの出荷団体を対象に、生育モデルとオンラインの気象データに基づいて圃場別に生育シミュレーションを行い、予測収穫日と収穫量を集計して出荷団体における週別出荷数量を予測するアプリケーション(以下、出荷予測アプリ)である(図1)。
- 主に利用するオンラインの気象データは「メッシュ農業気象データ」(2012年度研究成果情報)である。全国任意の地域(1kmメッシュ座標)を指定して気象データ(日平均気温)を取得し、圃場別に生育モデルを実行して収穫日を予測する(図1)。
- 出荷予測アプリの生育モデルとして「葉齢増加モデル」を用いている。日平均気温のみを説明変数とし、地域、時季、品種についてほぼ同一のモデルが当てはまる(図2)。定植日から日葉齢増加量を積算して日々の葉齢を求め、圃場別に収穫期の目安の葉齢(収穫期葉齢:結球重500gの場合38~40)に到達する収穫量(定植株数×良品割合)を週別に集計し、週別出荷数量を予測する(図3)。加工用などで大玉とする場合は、収穫期葉齢をより大きい値に設定する。
- 契約取引支援マニュアルの概要を図4に示す。契約条件の出荷期間と数量に応じた作付計画を策定するため、作付前にシミュレーションを行って作付圃場、定植日、定植株数・面積を決める。栽培期間中は日々シミュレーションを行って週別出荷数量を予測し、出荷4~2週間前に取引先に情報提供する。不足や余剰が事前に予測される場合、取引先との契約条件変更の交渉、または不足分の調達や余剰分の販路確保などの対応を行う。
普及のための参考情報
- 普及対象:茨城県、長野県、静岡県、香川県の農業生産法人、JA等
- 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:上記の4県を含む全国のレタス産地における農業生産法人、JA等、数十団体に普及予定。
- その他:出荷予測アプリと契約取引支援マニュアルは、普及センター、JA、生産者には求めに応じて無償配布する。アプリ(xlsmファイル)は、Microsoft Excel バージョン2003以降がインストールされ、インターネットに接続可能なパソコンで動作する。また、他の葉菜類に対しても、葉齢増加モデルのパラメータ値と収穫期の目安葉齢が設定できれば、適用可能である。使用方法は、http://cse.naro.affrc.go.jp/sugak/yasai/ 参照。また、メッシュ農業気象データの利用には利用許可申請が必要である。
具体的データ
その他
- 中課題名:葉根菜類の加工・業務需要に対応できる周年安定生産システムの開発、多様な農業情報の効率的収集技術及び統合利用技術の開発
- 中課題整理番号:113a4、160b0
- 予算区分:交付金(革新的緊急展開)
- 研究期間:2014~2015年度
- 研究担当者:菅原幸治、岡田邦彦
- 発表論文等:菅原(2016)職務作成プログラム(予定)