機械除草技術を中心とした「水稲有機栽培技術マニュアル」

要約

高精度水田用除草機等を活用した除草体系をはじめ水稲の有機栽培管理技術についてわかりやすく解説したマニュアルである。現地実証試験の概要や生産費についても掲載しており、慣行栽培を行っている生産者が有機栽培を導入する場合等に活用できる。

  • キーワード:機械除草、雑草防除、水稲、マニュアル、有機栽培
  • 担当:環境保全型農業システム・有機農業体系
  • 代表連絡先:電話 029-838-8481
  • 研究所名:中央農業総合研究センター・生産体系研究領域
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

わが国では有機農産物に対する一定の需要があるが、有機米の生産量は1万1千トン(全生産量の0.2%以下)と少ない。農林水産省は、2018年度を目途に耕地面積に占める有機農業の取組面積の割合を1.0%に引き上げる方針を示しており、水稲についても汎用性が高く安定した収量が得られかつ生産費が慣行栽培の3割高以内となる有機栽培体系の確立が求められている。そこで、水稲の有機栽培で最大の問題である雑草対策として機械除草を中心とした効率的な除草体系を中心に、育苗から収穫までに必要な栽培管理技術を生産者等にわかりやすく提示することを目的に「水稲有機栽培技術マニュアル」を作成する。

成果の内容・特徴

  • 本技術マニュアルは、農研機構、福島県、新潟県、岐阜県、島根県などの試験場内および現地でおこなった試験データ等にもとづいて,水稲の有機栽培に有効な技術を作業および機械ごとにとりまとめたものであり、基本技術編、除草機械操作・活用編および現地情報・実証試験編の3編構成としている(表1)。
  • 雑草対策については、中核となる除草機械として高精度水田用除草機、高能率水田用除草機、チェーン除草機、水田用小型除草ロボット(開発中のため一部非公開)の使用方法、除草効果、留意点などをわかりやすく記載している。また、機械除草に組み合わせる耕種的な抑草技術をはじめ育苗から収穫までの栽培管理技術(体系)についても総合的に解説している(図1)。
  • 現地情報・実証試験編では、マニュアルを基本に高精度水田用除草機とチェーン除草機を活用した有機栽培の現地実証試験の概要を記載している。このうち、高精度水田用除草機を活用した実証試験では、幼穂形成期頃の雑草乾物重は雑草害がほとんど問題とならないレベルに抑制されており、水稲の収量も慣行栽培の85%以上となっている。また、生産費(60kg当たり費用合計)は目標としている「慣行栽培の3割高以内」である(表2)。

普及のための参考情報

  • 普及対象:水稲の有機栽培を行いたい生産者、農業法人、普及指導機関
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:技術マニュアルは全国の生産者等が利用可能。マニュアルに取り上げた高精度水田用除草機および高能率水田用除草機の販売目標台数は10年間で合計200台。
  • その他:水稲有機栽培技術マニュアルは、以下のWebサイトから利用できる。

具体的データ

図1,表1~2

その他

  • 中課題名:有機農業の成立条件の科学的解明と栽培技術の体系化
  • 中課題整理番号:153b0
  • 予算区分:交付金、競争的資金(農食事業)
  • 研究期間:2011~2015年度
  • 研究担当者:三浦重典、野副卓人、内野彰、宮武恭一、白石昭彦、田澤純子、中谷敬子、新良力也、櫻井民人、吉田隆延、水上智道、菅原幸哉、佐久間祐樹(福島県)、月森弘(島根県)、安達康弘(島根県)、荒木卓久(島根県)、古川勇一郎(新潟県)、熊澤良介(岐阜県)、藤井勝敏(岐阜県)、陶山純(みのる産業株式会社)
  • 発表論文等:三浦ら(2015)中央農業総合研究センター報告、24:55-69