インド型多収水稲品種「北陸193号」の超多収達成条件
要約
「北陸193号」は登熟が安定しているため、多収に向けてはシンク容量の確保が最重要となる。粗玄米収量約1t/10a達成には、穂数280本/ m2、穂揃い期乾物重1500g/ m2、同窒素吸収量16.5g/ m2以上を目安に、シンク容量1050g/ m2を確保する必要がある。
- キーワード:イネ、インド型、多収、シンク容量、窒素吸収
- 担当:新世代水田輪作・水稲超多収栽培
- 代表連絡先:電話025-523-4131
- 研究所名:中央農業総合研究センター・水田利用研究領域
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
多収品種の「北陸193号」は北陸以西の試験場圃場および現地圃場において、粗玄米収量約1t/10aを超える試験事例が複数報告されており、我が国の最多収品種として位置付けられている。しかしながら、同品種の多収条件について、地域を越えた詳細な解析は行われていない。そこで、同品種において約1t/10aの「超多収」を達成するための条件を整理して提示する。
成果の内容・特徴
- 3試験地、延べ6ヶ年の試験事例から、登熟期の気象条件(出穂後40日)が、平均気温22.5°C以上、日射量約15MJ/m2/d以上の条件で、シンク容量が高くても85%以上の高いシンク充填率が維持されており(表1、図1)、一定の登熟条件の下では、シンク容量が収量を規定している。
- 過去の超多収事例においても1065~1212g/m2のシンク容量に対して、89.3~94.4%のシンク充填率が確保され、996~1131kg/10a(粗玄米収量)の多収が達成されている(表1)。
- シンク容量は、穂数、穂揃い期までの地上部乾物重および窒素吸収量の影響が大きい(図2)。粗玄米収量約1t/10aの達成に必要となるシンク容量1050g/ m2以上を確保するための各形質の値は、穂数280本/ m2、穂揃い期までの地上部乾物重1500g/ m2、同窒素吸収量16.5g/ m2以上となる。
- 「北陸193号」の超多収達成のためには,上記の登熟条件や生育条件を確保するための作付け時期(出穂期)、裁植密度、肥培管理、水管理等を組み合わせる事が必要となる。
成果の活用面・留意点
- 「北陸193号」の超多収栽培の基本情報として、多用途利用米生産の普及指導者および生産者に対する重要な知見となる。
- インド型品種の特徴として以下の点に留意が必要であり、地域の普及担当者等の指導のもとに作付けすることが望ましい。
- 1) 種子休眠性、脱粒性を有する。
- 2) 耐冷性が低いため、育苗期や冷害危険期の低温が懸念される地帯では作付けを避ける。また、ウンカの常襲地帯では、ウンカ防除の徹底が必要になる。
具体的データ

その他
- 中課題名:水稲多用途利用のための抵投入超多収栽培法の開発
- 中課題整理番号:111a1
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2009~2015年度
- 研究担当者:吉永悟志、平内央紀、大角壮弘、古畑昌己、長田健二、松村修
- 発表論文等:
1) Yoshinaga et al. (2013) Field Crops Res. 150, 74-82.
2) 平内ら(2014)土肥誌、85(4):369-374
3)Ohsumi et al. (2014) Field Crops Res. 168, 38-47