種子のモリブデン(Mo)含量は根粒超着生ダイズの窒素固定活性に影響する

要約

採種用のダイズにMoを葉面散布して生産する高Mo含量種子(富化種子)に由来する根粒超着生ダイズは対照に比べ根粒重は減少するが根粒窒素固定は高く増収する。根粒超着生ダイズの低い窒素固定能の要因として低Mo含量の根粒の多量着生が示唆される。

  • キーワード:ダイズ、根粒超着生、モリブデン、種子、葉面散布
  • 担当:新世代水田輪作・大豆安定多収栽培
  • 代表連絡先:電話029-838-8481
  • 研究所名:中央農業総合研究センター・生産体系研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

モリブデン(Mo)はダイズの根粒窒素固定に必須の元素である。ダイズは生育初期に必要なMoを種子に依存している(石塚1982)。生育初期から多量の根粒を着生する根粒超着生ダイズの根粒窒素固定にとって種子中のMo量は正常な根粒着生をおこなうダイズに比べてより重要と考えられるが、これまでの超着生系統の栽培研究では種子中のMo量は考慮されていない。そこで、富化種子を用い超着生ダイズの根粒窒固定活性、生育・収量の増大に種子中のMoが重要であることを明らかにする。

成果の内容・特徴

  • Mo富化種子に由来する超着生ダイズ植物体は対照種子に由来するものに比べ地上部重、根重が大きいが、着生する根粒の重量は少ない(表1)。
  • Mo富化種子に由来する根粒超着生ダイズ植物体に着生する根粒は対照種子由来の植物体に着生するものにくらべ1個当たりの重量は小さいが、根粒のMo含量は高い(表1、図1a)。
  • 根粒の窒素固定活性の指標である茎乾物のウレイド含量はMo富化種子に由来する根粒超着生ダイズが対照種子に由来するものに比べ高い。正常な根粒着生を行う「エンレイ」でも同様な現象が見られる(図1b)。
  • Mo富化種子に由来する超着生ダイズ植物体の収量は対照種子のものに比べ有意に増収するが、正常な根粒着生をする「エンレイ」の収量に近づくが超えることはない。「エンレイ」の場合、富化種子区の収量は対照区に比べ有意ではないものの増収する傾向がある(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 根粒超着生ダイズの低収要因解明の一端となる。根粒機能を活用した大豆多収栽培技術開発の参考になる。
  • 茨城県つくばみらい市の中央農業総合研究センターの水田輪作圃場で試験を実施した。土壌の種類は灰色低地土で、可給態Mo含量は0.3mg/kgであった。ダイズの栽培法は基肥無施用の不耕起狭畦栽培であった。
  • Mo富化種子は試験前年に採種用に栽培した大豆の子実肥大始期に平方メートル当たり100mLの0.3g/Lのモリブデン酸ナトリウム水溶液を2回、葉面散布して生産した。供試した種子のMo含量は付表に示した。

具体的データ

その他

  • 中課題名:根粒機能を活用した大豆安定多収栽培法の開発
  • 中課題整理番号:111a2
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2005~2015年度
  • 研究担当者:浜口秀生、渡邊和洋、松尾和之、梅本雅、高橋幹、渡邊好昭、伊藤一幸(神戸大学農学研究科)
  • 発表論文等:
    浜口ら(2016)日作紀85(2)130-137