茎葉多収型イネWCS用品種「たちはやて」は飼料用稲麦二毛作体系に適する

要約

飼料用稲麦二毛作体系にイネWCS向け茎葉多収型早生品種「たちはやて」を導入すると、オオムギWCS収穫後の6月中旬に移植しても、9月中旬に黄熟期収穫が可能で、出穂期が近い穂重型品種と同等の乾物収量、TDNが確保できる。

  • キーワード:イネWCS、茎葉多収、稲麦二毛作、乾物収量、TDN
  • 担当:自給飼料生産・利用・耕畜連携飼料生産
  • 代表連絡先:電話029-838-8481
  • 研究所名:中央農業総合研究センター・生産体系研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

近年のイネWCS(ホールクロップサイレージ)生産では、消化性に優れ、高い乾物収量が得られる「たちすずか」、「たちあやか」、「リーフスター」といった茎葉多収型品種の利用が増えている。しかしながら飼料用稲麦二毛作体系においては、これらの品種は中生から極晩生の熟期で生育期間が長いため、オオムギWCS収穫後の晩植条件では収穫時期が遅くなり、イネWCS収穫後の飼料用オオムギ栽培のための準備期間の確保やオオムギの適期播種が困難になる。また、近年、北関東の二毛作地帯での被害が大きい縞葉枯病に対しても、これらの品種はいずれも罹病性であるため、導入は困難である。
そこで、作物研究所で育成された、早生で縞葉枯病抵抗性であるイネWCS用茎葉多収型品種「たちはやて」を飼料用稲麦二毛作体系に導入し、飼料用オオムギ栽培のための準備期間を確保しながら、乾物・TDN収量の多収を図る。

成果の内容・特徴

  • 「たちはやて」は、「ホシアオバ」や「夢あおば」のような出穂期が近い穂重型の比較品種と比べて、出穂期から黄熟期までの到達日数が短く、オオムギWCS収穫後の6月中旬に栽植密度15.2株/m2の疎植条件で移植しても9月中旬に黄熟期収穫が可能である(表1)。また、比較品種と同等の高い全乾物重、ロールベール乾物収量が確保されるとともに、穂重/全重比は低く、茎葉多収型の特性が保持される。稈長100cmを超える長稈となるが倒伏は認められない。
  • 飼料成分では、穂重型の比較品種と比べて、乾物中のNFC(非繊維性炭水化物)がやや低くなるが、TDN(可消化養分総量)は同等である(表2)。
  • オオムギWCS収穫後の6月中旬に移植した「たちはやて」では、栽植密度15.2株/m2の疎植と、栽植密度21.9株/m2の標準植との間にロールベール乾物収量、TDNとも有意差は認められない(図1)。

成果の活用面・留意点

  • 中央農研センター谷和原水田圃場(茨城県つくばみらい市、細粒灰色低地土)で行った試験結果である。
  • 関東地方の二毛作栽培地帯を対象とする。
  • オオムギWCS収穫後のイネWCS晩植栽培ではイネツトムシが発生しやすいため、発生状況に応じて適切な防除が必要である。

具体的データ

その他

  • 中課題名:耕畜連携による水田の周年飼料生産利用体系の開発
  • 中課題整理番号:120c3
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2011~2015年度
  • 研究担当者:山口弘道、石川哲也、石崎摩美、草佳那子
  • 発表論文等:山口ら(2014) 日作紀、83(4):352-355